第3話これが、私の超能力!?
『王様のゼリー』は、駄菓子屋に売られているロングセラー商品だ。
これを製造しているのが、国王の弟である色見暁百さまが社長のキングフーズだ。
駄菓子からスイーツまで幅広いお菓子を製造している会社で社長自らお菓子の製造に携わっているそうだ。そのお菓子を食して私が眠ってからどれぐらいの時間が過ぎただろうか。私が目を開けるとみつ兄さんと目が合った。
「おお。目が覚めたか」
「あうhyでういおfdpうぇ」
声にならない叫び声をあげてしまった。何故なら、私はみつ兄さんの膝に寝ていたからだ。
「どした! どっか痛いか?」
「いっいえ……。大丈夫です」
私は、ゆっくりと起き上がった。
「そうか。良かった。しっかし、このゼリー飲んでぶっ倒れてこれ苦情と来てそうだよな……」
「酷い気分でした」
「顔色悪いもんな……。もう少し寝とくか?」
「いえ……それより、これで私にも超能力が備わったってことですかね?」
「ああ。才能があれば……だけど、そこは問題ないだろう。王位継承選に選ばれているしな」
「才能ですか?」
「人間誰しも隠れた才能ってのがあるんだ。王家の人間は、18歳になるとその隠れた才能が花開く。超人的な能力がな。だけど、開花できないやつも居るらしい。それは、心の強さ。心が強い人間ほど才能が花開く。だから、王家の人間がそのゼリーを飲んも超能力が開花しないやつもいるらしいぜ。正直、この世の中、自分の心を信じて正直に生きられるってのは難しいことかもしれないよな……。で、喜四華、身体に漲る能力とか感じるか?」
「感じません……」
「そうか……。こればっかりは、自分次第だしな。まぁ、あと3カ月あるし焦らずってところかな。さて、今日はもう遅いから俺はそろそろ帰るかな。何か困ったことがあったらいつでも連絡してくれ」
連絡先を交換すると、みつ兄さんは帰って行った。20時……。私、2時間も寝てたの!?その間、みつ兄さんは私に膝枕を……。思わず、赤面してしまう。黒縁の分厚い眼鏡をかけなおす。度は入っていない。顔が見えないように、猫背の姿勢、前髪も顔が見えないようにものすごく長い……。昔から、こんなに卑屈ではなかった。
「自分の心か……。だったら、私は超能力なんて開花しないだろうな」
中学2年生の春、私はサッカー部の先輩から告白された。当時、恋愛漫画に大ハマりしていた私は少女漫画みたいだと胸が高鳴った。しかし、その日からクラスの1軍の女子や3年生の先輩から嫌がらせを受けるようになった。私が告白を断ると、ブスのくせに断ったとか火に油を注ぐ結果となった。友達も3年生の先輩が怖いからと私とは遊ばなくなった。
私は、学校へ行くのを止めた。自宅から遠いけど知り合いが居ない高校をお母さんが見つけてくれてそこに通う事にした。通学中、偶に会う同級生から隠れるためにこの眼鏡をかけて通学している。高校生活は、割と順調だ。友人も出来た。もしかしたら、この高校に入学することは国王様が仕向けたことなのかもしれないけど私は割と楽しく学校生活を過ごしている。
「心に正直にか……。私、悪くないじゃん。てかさ、あのサッカー部の先輩も告白しておきながら私がいじめられても何もしなかったじゃん!てかさ、小学生からの友達も3年の先輩が怖いからもう遊ばないって酷すぎない!?」
私は、納戸からお菓子とジュースを取り出し食べ始めた。
「この黒縁眼鏡だってなんで! 前髪だって切りたい! うざったい!私が隠れて過ごさないといけないんだー!!」
なんだか、調子が出てきた。こんな大声出すの事態久しぶりだ。
「我に能力を!!なんてね」
私は、手を天井にかざした。その瞬間、私の手から光が出てきた私の全身を覆った。
「なっナニコレ!!」
手をかざすのを止めると消える。もう一度、念じて手をかざす。光が灯る。
そのまま壁にパンチしてみる。何も起こらない。こういう光を身にまとうって事が肉体強化とかではないのか。じゃあ、バリアとか?私は、ペットボトルを自分の足へ落下させてみる。普通に、当たり普通に痛い。
「ってことは私の能力って発光!?」
発光するだけの能力って目くらましにしかならないんじゃないの。まるで、懐中電灯じゃないか!でも……私は光を点滅させたりしてみた。地味に楽しい。1人、カーニバルじゃんとか思っていたらぷつんと目の前が暗くなった。あっこれ意識失うパターンだわ。そのままソファーに倒れ込んだ。
いきなり、王家の人間だと言われても荷が重すぎるんですが みくろぎ @mikurogi
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