第14話
重い気持ちでまたやってきた夢の世界。
今日は早々に寝てしまおうか。
そう思いながらもついつい三番街フォーク村に足を運ぶと、すぐに違和感に気づいた。
三番街フォーク村のアーチ看板は傾き、街灯はいくつも歪んでひしゃげていて、民家の屋根のレンガが崩れ落ちている。
ハロウィン……じゃないよな。
村を歩いて、いつもの通りを曲がって、バー・ミツバチに直行した。
中には、ヤマトとマスターがふたり、酒も飲まずにカウンターで突っ立っていた。
「ヤマト。マスター。何かあったのか?」
「クロックか。そうだな……どこから話すべきか」
「あー、ゼロから頼む。今来たばっかなんだ」
「わかった。どうやら俺たちが来る前に、襲撃があったらしい」
「不在時にやられたか。タチ悪いな」
「でも、村の衛兵がいい仕事をしてくれた。村を襲った輩を数人、捕えたらしい」
「数人? 集団犯罪ってことか?」
「そうだ」
さらりと、とんでもない会話をしているな。
単身の犯行なら、まだ納得ができる。「ちょっと他人の物が欲しくなっただけなんです」という短絡的な思考である場合が多いからだ。
しかし、それが複数人になると、話が大きく変わる。
誰かが計画しなければ、複数人の犯行は発生しないからだ。
つまり、何者かの悪意があるということ。
こんなバーで、なんちゅうことを聞かせてくれるんだ。
「クロックが来るまでの間に、各バブルとも連絡を取り合ってみた」
「さすが、ツテがあるね、村長。んで?」
「どこも不自然に犯罪が多発している」
「例の、裏で何かやってるやつか。何か情報は繋がったのか?」
「今回の犯人は拷問に次ぐ拷問の末に、ようやく吐いたよ」
「なんて」
「”
「狐面……ペルソナか」
「恐らく。こいつが、何らかの形で関わっているとして、調べ上げた」
「……上げた? もう分かっちゃってんの?」
ぎし、とヤマトがバーのテーブルに突っ伏す。
気を遣ったか、マスターがレモンを添えたお冷を出した。
「この世界にはいろんなやつらがいる。無法者、暴力好き、変態。そしてそれらが”許されている”。誠に遺憾だが、不埒な連中が、一見平和なこの夢の世界にまだ蔓延っているのも事実なんだ。そして、それら悪者どもを、まとめ上げてビジネスにしているやつもいる」
「はっ、利益も何もないこの世界でビジネスか。ウケるな、そいつら。何者だ?」
ヤマトは、マスターにありがとうと礼を述べながら、水を飲む。
「狐面の女が所属している組織は”
「暴力団みてーな名前しやがって……規模は?」
「およそ30人。平均Lv.50の、精鋭の集まりだ」
「合計Lv.1500か。簡単に潰せるモンじゃねーな」
攻めるときは防衛側の10倍の戦力が必要になるとかならないとか言うけど、事実、そんな感じだと思う。僕の魔力はLv.148だ。古参ではあるから、他の人からしたら桁違いに強かったとしても、合計Lv.1500はさすがに僕ひとりでどうこうできるレベルじゃない。
三番街フォーク村の全戦力を集めても、互角程度だろう。そもそもここは商店街であり、冒険者ギルドを抱えているような戦闘特化のバブルではない。
「いや、攻めるなら今夜だ」
「マジかよ」
「大マジだよ。この夢の世界の犯罪を助長する危険な組織。当然、これは三番街フォーク村だけの問題ではない。だから、こいつらを潰せるよう”友人”に”ツテ”で戦力の追加を依頼しておいたところだ」
「話がはえー。やっぱ人脈はパワーだわ」
僕はヤマトの手際にただただ感心する。
やはり、ナイトキーパーなんて役職を獲得できるような人間は、コミュニケーション能力が段違いだ。そして、質を高めるより数を増やしたほうが手っ取り早く強い。
大昔に起きた大戦でも、ジュエリーがジュエリーと呼ばれる以前のときも、仲間同士が結託し、巨大な組織ができた。ヤマトはそこの幹部だった。そのときのツテを、今もまだ保有しているのだろう。
「早速、来てくれたようだ」
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