第13話
「話の途中だったじゃん」
いつもの特別教室の連絡通路で、僕らは弁当箱の包みを開ける。
幸いなことに、僕はぼっちで、彼女は高嶺の花なので、互いにクラスからいなくなっても不都合ないのだ。
「嫌いって言われて、傷ついちゃった?」
「何で僕が君に嫌われて傷つかなくちゃいけないんだよ」
「じゃあ、何?」
「ヒーロー辞めようと思って」
「え、軽っ」
「別に肩書なんて、なんでもいいんだ。誰の敵にもなりたくないってだけで」
「でも、誰とも敵対しないってことは、自分の信念を持たないってことだよ。そんな胡乱な人間、目指してなるようなものじゃないわ」
「えー、じゃあどうすりゃいいんだよ、面倒くさいなぁ」
「チクタク。君、何したいの」
「だーかーらー、みんなと仲良く生きてたいだけなんだって」
「みんなって、誰よ」
「気の合うやつら」
「それじゃ、気の合わないやつらは排除するってこと?」
「互いに干渉しなきゃいいだけじゃん。わざわざ傷つけあったり自分の存在を誇示したりする必要なくない?」
「互いと関わらない社会なんてないよ。上も下も、必ず生まれる。その中で折り合いをつけていかなくちゃいけないんだよ」
「うへー」
「君は、深く考えず今を楽しく生きる。刹那的快楽主義ってことね。チクタク。あんた根っこからのジュエリーだわ」
「……やっぱヒーローになろうかな」
「まだ言う」
「僕は明日のお前の味方だぜ、みたいな」
「なにその青春キャラ」
ふふ、とレンコンを持ったクシナサラが笑う。
「青春。僕には似合わない言葉だ」
「君が、とても優しい人だということはわかったよ」
例えば。
例えば君が傷ついて、挫けそうになったときは、必ず僕がその元凶を、なまむぎなまごめなまフレアでぶっ飛ばしてしてやろうって話なんだ。
なのに。
なんだ、ヒーローって、思ってたより、難しいんだな。
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