第2話 追放早々大ピンチ⁉️
「はぁ……これからどうしよう」
真昼間の街の噴水に腰を掛け俺はこれからについて頭を悩ませる。職を失い先が見えないせいか自然と溜息が出てしまう。
「くらえ〜シャボン攻撃〜!!」
近くにいた子供達が泡を手から飛ばして遊んでいる。
あれが魔法。前世の日本での価値観に合わせて言うなら妖術と言うのだろうか?
魔力と呼ばれる魔法専用のスタミナを消費し超常的な現象を起こせるのだ。あれ以外にも火を出したり小規模の雷を落としたりできる。
そう。子供でもできるのだ。あんな子供でも泡を出す程度なら使えるのだ。
何で俺は魔法を使えないんだろう……やっぱり前世のせいなのかな……
俺には前世の記憶がある。地球の日本という国で過ごしていた記憶が。その世界で魔法なんてものはなかった。
俺が魔法が使えないのはそのせいだろうか。だがどれだけ考えても魔法なしで生きていかないといけないという現実は変わらない。
はぁ……まぁ落ち込まずに頑張るか。
どうせ一度は死んだ身だ。ある意味失うものは何もない。
俺は心機一転頑張ろうと意気込む。
「あのーちょっといいかな?」
「うわぁ!!」
考え事をしていたせいか女の子に眼前まで迫られて初めてその存在に気づく。アメジストのような綺麗な紫色の長髪を揺らし、整った顔立ちをグイッと近寄せる。
歳は俺と同じくらい……十八前後か? 知り合いじゃないはずだけど……こんな綺麗な子忘れるわけないし。
「えっとごめん……驚かせちゃった?」
「考え事してただけだから気にしないで。それより俺に何か用?」
「そうなのよ。あっ、でもまずは自己紹介からよね! 私はミーア。冒険者をやっている者よ!」
やはり初めましてで間違いないようだ。じゃあ何でいきなり俺に話しかけたのかという疑問は残るが、こちらも自己紹介しなければ無礼だ。
「俺はリュージ。まぁ……俺も君と同じ冒険者だよ」
パーティーを追放されただなんて言えず、言葉を濁し当たり障りのない返答をする。
「リュージ……? 随分変わった名前ね」
「物心ついた時には親が居なくてね。自分で付けたんだ」
正確には自分の前世の名前をそのまま使っているだけなのだが。それでもこの世界で親が居ないのは本当だ。
俺は孤児院に拾われそこで育てられた。
「それで何か用かな?」
「あぁそうよね。少し私の薬草採集を手伝ってほしくて。もちろん報酬は出すわ。どうかしら?」
「うーん……でも何で俺に?」
正直この申し出は願ったり叶ったりだ。俺の好きな人助けもできて生活面もこの場はなんとかなる。
だがわざわざ噴水に腰掛けていた俺を誘った理由が分からなかった。
「優しそうだからかな! ほら。最近物騒だし変な気起こされても困るからさ……」
優しそう。その言葉に引っ掛かりを覚えるがこちらを肯定的に捉えてくれるのはありがたい。
「じゃあ君の期待に応えられるよう真面目に手伝わせてもらうよ。それで早速行くの?」
「うんそうしましょう。採集場所は調べてあるからついてきて!」
俺はミーアに連れられ山を一時間程登り草木が生い茂る場所まで来る。
「ここが良さそうね。じゃあ採集を始めましょうか!」
俺はミーアから籠と採集用の小型ナイフを渡される。それを用いて黙々と薬草を採集していく。
薬草はポーション等の怪我を治す道具に必須なものであり、調合すれば市販のポーションの効力を高めることもできる。なので冒険者にとって薬草は身近ながらも貴重で重要な品なのだ。
「ふぅ……これくらいでいいかしら? そっちは……結構あるわね。それも綺麗に採れてる……こういうのは慣れてるのかしら?」
「まぁね。ぜん……昔からこういうことはよくやってたから」
「それだけあれば十分ね。そろそろ戻りましょうか」
薬草が十分集まったので俺達は山を下り街に戻ろうとする。だが道中で俺は何者かにつけられているような気配を感じ何度も振り返り背後を確認してしまう。
「どうしたの?」
「いや……何だか誰かにつけられているような……」
目を凝らしていると俺の目が視界の端で高速で動く何かを捉える。
「危ないっ!!」
俺は咄嗟にミーアの頭を掴み乱暴ながらも下げさせる。そのおかげで飛んできた棍棒は空を切り地面に突き刺さる。
「一体何なの……? えっ……あ、あれは……オーク!?」
ぞろぞろと出てきたのは巨大で豚のような顔に緑色の皮膚の魔物。Cランクに指定されているオークだ。バニス達でも油断できないレベルの強さの魔物。
この状況は俺やミーアなど戦闘ができない冒険者にとって最悪な事態であった。
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