元カレ元カノ事情

クリスマスの日、残念ながら大瀬と城山は一人で過ごしていた。クリぼっちと言うべきか?(お互い恥ずかしがって一緒に居ないだけ)

そんな二人に降りかかる、地獄のような出来事。


ピロ~ン♪、と一つのメッセージが二人のスマホに訪れる。

城山には『お願いがあります』、大瀬には『今から会わない?どうせぼっちでしょwww』お互いちょっと顔が青くなっている。

城山は今にも泣き出しそうな顔で画面を見つめている。それは「メールが来て嬉しい」ではない。

...『もうやめてくれ、頭の中から出ていってくれ...』という泣き方だ。

一方大瀬は焦っていた。

「あっべこいつの連絡先消してなかった最悪」彼女に三股された気持ち、そのうち一人が暴力団関係で金をむしり盗られそうになったことを今でも鮮明に覚えている。

「チッ、トラウマがまた蘇りやがった...」


「なんで、なんでなの...」城山は常日頃からDVを受けていた。

酒、煙草、パチンコ。その三つに溺れた本格的なクズだ。見た目だけはよかったのだ。浮気も体関係を持たない、いい人だった。しかしそれはただの仮面に過ぎなかった。実際には何股もし、女を何度もホテルに連れ込み卑猥な事をしていた。挙げ句の果てに私は捨てられたのである。

クリスマスをぶち壊されたあの日。一人の女を連れて、この家に来た。

『______!!』あの言葉は刺が鋭い。何を言われたかは思い出せないが、良いものではないと覚えている。

「うっ...」ショック。残酷さ。そして、胃から込み上げてくるモノ。

「おええっ...なんで今更ヨリを戻そうっての...?」涙を必死に止めようとする。彼女の言った通り、画面には『ヨリを戻そう』の一言が。


「大瀬...さん...今大丈夫ですか...」城山はぐったりしている。表情から見るに、トラウマがあるのだろう。これを断るわけにはいかない。

ドアを開くと、今まで我慢していた感情がばっと溢れたのだろう。大粒の涙を大量に流していた。

「ハナも同じだな、クリスマスに不幸が起きたのは。」俺のパーカーで涙を拭く。実質、抱き締めているも同然だ。俺だって...苦しいんだよ...。

「とりあえずウチ入れ、歩けるか?」彼女は首を横に振った。

「こんなの聞くのあれだけど、...甘えてる?」縦に振る。

「抱っこしてほしいの?」また縦に振る。

「まぁ、ぐったりしてるからな...ほらよっ!」丁寧に城山を持ち上げる。寒いからなのか、照れているのかは分からないが、顔が真っ赤である。おそらく後者だ。お互いの白息が混じりあう。

「ごめんな。俺、手冷たいから...」

「いいんですよ、二人でいると、特別暖かい気がするんです」

「惚れることを平気で言わないで」


「大瀬さんは元カノに浮気されて、周りが危ない奴ばっかりだった、って事ですね...金を奪われる...大変ですよね。しかも女の方も相当ヤバイ。」

「城山の方が一番辛いだろ、逃げ場が無かったんだから。」友達に相談しても『えー、幸せそうでいいね。羨ましいよ』とはぐらかされる。彼氏も彼氏で本質を隠している、友達は彼を見抜けなかった。

...いや、目を逸らそうとしているのか?

大瀬さんなら...信用できる...?

「あの...これ...昔元カレにやられた跡...」

「うっわ、最低だなそいつ...痛っ...俺も痛み感じちゃったよ」

「ジュッ...って音がしたのを覚えてるんです...今でも...」

だから今まで手袋してたんだな...傷隠しか。

「あの、大瀬さん!?何して...」

「この手袋、俺がいるときだけ...外して欲しい...いやあの、この傷見てると、城山をもっと大切にしたいというか!ごめんね!変態だね俺!」

あ、やっぱり気持ち悪いか...

「大瀬さん...やっぱり、あなた変な人ですよ」

「そういうお前もだろ...今日の夜、どうするか?」

「鍵閉めてなくて...」

「お前はここに居な、俺が鍵閉めてくる」

あぁ、もっと側にいたい。もっとかっこいいところが見たい。あの笑顔を忘れたくない。...やっぱり好きなんだな、大瀬さんの事が。


お互いの因縁である元カレ元カレには断るという選択肢を送った。

城山は「新しい彼氏である大瀬だ。彼女を大切にできない奴は人間失格。次近づいたら警察行きだからな?」と忠告。

大瀬は「新しい人が出来たのでムリでーすww今までの男どもと仲良くしてろよwwこんな無能な俺よりあいつらの方が良いだろwww???」

と煽り性能マックスで返した。返信は未だに来ない。

あの二人はきっともう意気消沈しているだろう。




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