隣人同士の喧嘩は哀れだ!

「ああああああああああああ!」目覚めた場所は玄関。

松代!お前はなにがしたいんだ!

夢にまで出てきてでも俺を抱きたい(意味深)のか!?

『カズヤさん、一体ここで何してるんですか』苦笑いでこちらを見つめられた俺は、昨日の顔をぶつけた赤みと相まって顔面真っ赤だった。


「松代さんの執着が激しいですね...」

「いい加減にしてくれ...城山も松代を止めるのを手伝ってほしいー」

「いいですよ、私が決着を着けてきます!」

「は?そんなか弱い城山が喧嘩なんて...」

「できるできる!弱くなんかない!私は出来る!Yes I can do it !!!」

「おいおいおい!stop!俺が一喝入れてくるから!」

「いえ!いいんです!そんじゃ!」

「待ちやがれーーー!」

あんな姿は初めて見た。怒り心頭でピンポンラッシュしている城山を。

無事を祈るぞ、城山......松代が出てきた...

「大瀬く...ん?」

「城山ですけど」

「...」ヤバい...城山、睨まれてる...殺される...

「今日はどうしたんですか、苦情ですか?」

「はい。大瀬さんに付きまとうの止めてください。彼も嫌がってます」

「あなたに何が分かる?」煽ってる...論破系YouTuberの顔してる...

「彼、純粋。汚したらいけないと思うんです。」

「だから?」

「それだけ」話にならない!!

「まぁ、確かに...でも本当か?」

『本当だこの野郎!』

「!」

「カズヤさん!」

「いい加減にしてくれよ松代ォ...夢にまで出てきて一体何がしてぇんだ?」あっ、リミッターが切れる...

「尊敬するぜその執着心...」学生時代に戻っちまう!

「落ち着いてくださいカズヤさん!まだ殴り合いには達してません!」

城山は俺の拳を押さえ付ける

「ごめん......またやっちゃった...」何かに後悔している様子。

「あ?」

「いつだって自分は、人に執着しちゃうんです...あの時...」

「なんか話長くなりそうだから私の家で座って話をしてほし~な...」強!


「廊下を歩く大瀬くんに一目惚れしちゃって」

おいこの時点から怪しいぞ

「僕は...昔から念が強いようで...よく夢を操れるんです」

マジだなこれは

「それで...夢に出てきて、好きになってもらおうと...」

「努力は評価したい!でもその努力を他に回せ!」

「例えば...なんですか...?」

「ラブレターとか!朝ごはん作ってくれるとか!」

「朝ごはん、あれば私の役割です...」

「ラブレターを一万通出してくれれば考え直してたかもしれない!」

「勝負しましょうよ松代さん!どっちが好きか!」

「いいですね!その勝負、乗りました!」

「えっ...二万通もラブレター貰わなきゃいけないの?」

「そう言うことになりますね!」

「俺の本命は城山だけd」

『じゃあ、私達の恋、受け取ってください!』

「それでは!」「また明日!」

「...紙の処分に困る...今度は俺に苦情の矛先が向くな...はは...」

苦笑いだけじゃ表現できない。


束でくるのは想定不可だった。

十通目。好きなところを全て書きなぐってある。

百通目。愛のポエムが連なっている。

千通目。敷き詰められている「好き」。プレゼントも付いているようだ。

一万通目。城山は少女マンガを、松代はBL兼夢小説を書き始めた。

二万通目。両者は絵になり、性展開になった。

「気持ち悪...でも、ちゃんと俺を描けてるな。輪郭も構造も凄い...」


『どうですか!』

「えー、この勝負、引き分けです」

「えー?なんで!?」

「どっちの思いも伝わりましたー。これで許してくれ」

城山には好きな作家のシリーズBL本をあげ、松代の場合は頭を撫でてあげた。城山は鼻血を滝のように出し、松代はなんだかうっとりしている。

これでいいだろう。喧嘩は暫く止してくれ、哀れだ!!

「でも、想いはまだまだ止められません!勝負は続きますよ!」

「望むところです!」俺だけハブられている。

...まぁ、こんな変な争いも、いつかは終わるんだろうな。




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