第十三回 で、後ろの正面。(梨緒の視点)


 ――振り返らない後ろ。ただ前へ進む。


 今回のことで、ちょっと大人になったから。



 一歩一歩、近づいてる。二人の力でここまで来たの。二人が力を合わせて。だからもう少しこのまま、頑張ってみる。そして、辿り着いたの。


 三つ目の会場に。


 三つ目のスタンプを押した。特典は? と、辺りを見るも、先着三十名様。見当たらないの。ウルウルと泣きそうになった時、受付の女性がニッコリとして、


「はい、最後の特典よ」


 と言って手渡してくれた。それも二人分。


「何泣いてんの、梨緒りお


千恵ちえだって泣いてるじゃない」


 でも笑ってる。いつもと違うプレゼント。サンタさんやお誕生日とはまた違うの。冒険で掴んだものも、その残る思い出たちも大切な宝物。二人で成し得たことだからだ。


 梨緒と千恵が力を合わせたこと。


 それから推しのオタサンに会えたことも含め。とっても仲の良い姉妹。そのことを知ったことも。梨緒と千恵だからできた冒険旅行。


 でも、まだ終わりではない。


 帰るまでが冒険。それから、お昼もまだだったから。お腹の鳴るタイミングだって、梨緒と千恵は同じで、そしてクスクスと笑い声?


 振り返った。後ろの正面。


 黒ずくめの女が、聳え立っていた……


 とはいっても百五十センチよりも低い。でも梨緒と千恵からすればビッグサイスだ。


 それにサングラス外したら、あどけない目をしてることもわかってる。伝わる匂いでわかるけど、今はまだ、その時ではないの。



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