第十二回 で、まっしぐら。(千恵の視点)


 ――戻る地下二階。さっきまでオタサンがいた会場へと。



 今は、もう普通のイベント会場。何事もなかったかのように、スタンプラリーは続けられてる。千恵ちえたちも負けられない。まず三つ目の会場を掲示板により確認。


 でも、それよりも……


「どうしたの? 千恵」


梨緒りお、感じない? ずっと千恵たちについてきてるの。あの黒ずくめの女」


 いつから? 地下二階からずっと。それにオタサンのお話を聞いて、クスッと笑ってたし。サングラスにハットまでして、髪は長くなく、ママと同じくらい。ボブかな? 千恵も梨緒も同じ髪型。黒のスカーフ。そこから広がるワンピースも黒で、身長はママと同じくらい。でも梨花おばちゃんって可能性もある。


「それはない。癖が違うし。梨花りかおばちゃんはハンドバッグの紐、襷掛けにしない。それにしても下手な尾行。気付かないフリしとこう、千恵」


「ラジャー」


 ……とはいっても、本当に誰なんだろう? 梨緒は知ってるみたいだけど、教えてくれないし。それって何か意味があるってことなの? と思ったから、それ以上は……


 掲示板で確認した三つ目の会場は一階。


 そこまで上がる。エスカレーターと共にアゲアゲのワクワク感。


 迫る黒ずくめの女。千恵たちの後ろにピッタリと。でも変な感じ。警戒する感覚が生れない。それどころか、初めて会ったような感覚もなしで、


「振り返るな、千恵」


 と、コソッと耳元で梨緒は言った。


 ギュッと抱えるバンプラの入った紙袋。梨緒は千恵の横にいる。それだけでも心強かった。警戒する感覚がなくとも、それでも誰かが解らない以上、安心はできない。


 前を向いて歩くしかない。今は目的地に向かって、まっしぐら。



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