第二回 千恵の視点。


 ――ママの言ってた罰って何? 台所に向かうママの後ろ姿が不気味だ。



 砥石で包丁を研ぐ音。それをもって切り刻む。夕ご飯の仕度へと移り変わる。その様子を見ながらも、梨緒りおとは顔も合さない。口も利くこともないまま……


「梨緒、千恵ちえ、いつまでそうしてるの? いい加減に仲直りしたら?」


 と、ママは言うけど、そんな単純じゃない。それにママは今、さっきみたいな口調ではない。いつものママに戻ってる? 梨緒もきっと同じことを思ってる。腕を組んでプイとはしてるけど、本当はもう喧嘩してたことなど、どうでも良くなってるの。


 意地の張り合い。どっちが先謝るか。


 だったら千恵、悪くないから。すると鳴り響く、インターフォンの音が。


 ママは玄関に向かう。窓からは綺麗な夕映えが見える。そしてワンオクターブ高いママの声。もしかしたら、と思った途端だ。


「あ、梨花りかおばちゃん」と、高らかな梨緒の声。明らかに違う梨緒の表情。千恵を見る顔とは違ってる。そう思ってると「千恵ちゃんもおいで。二人にプレゼント」


 梨緒と並ぶ。その時にはもう、意地の張り合いもどうでもよくなってた。手渡されたものは何? 梨緒の手にも、千恵と同じものがある。一枚の……チケットだ。


千佳ちかから頼まれたの。二人に渡して欲しいって」


 って、これは何? ママから頼まれたって? フム、何か梨緒が見てるアニメのようなカッコいいロボットが描いてあるけど。するとだ、梨緒はフルフルと「これすごいじゃない。梨緒の欲しかったバンプラだよ。それから別にもう一体?」


「そう、二体」「梨花おばちゃんとまた一緒に作るんだね」「ちょっと違うんだな、今回は」「ン? どういうこと?」「梨緒と千恵、二人が力を合わせてスタンプラリーから挑戦するってことでいいよね、千佳」と、梨花おばちゃんが言ったの。


 するとママは、クスッと笑って、


「これが罰だよ。梨緒と千恵が二人で、このプラモデルを作ること。わかるよね?」



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