割と強いスキルを持ってるが、リスクが高すぎる件。

やまもと

第1話

「おーい〇〇くーん早く来ないと置いて行っちゃうよー」

 遠くから少女が少年に向かって叫んだ。

「ちょっと待ってよ〇〇〇〇ちゃん、置いていかないで〜」

 慌てて荷物をまとめた少年は一呼吸おき、少女に向かって答えた。

「やだよ〜〇〇くんはやくしないと〇〇〇さんに怒られちゃうもん」

「準備できたよ!もう待ってて〜」

 カバンを背負い、〇〇〇〇ちゃんに向かって走りながら問いかけた。

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「またこの夢か」

 天井を見上げありきたりな台詞をポツリと呟いて頭を掻いた。

「まだ起きるにはちょっと早いけど、起きて、仕事するか」

 遠の昔にへたってしまった布団から起き上がり、身支度を洗面所に向かった。

「相変わらずひでえ面してんな、あの夢ってそんな怖い展開が待ち受けてるのか?俺よ」

 鏡の自分に問いかけるが、当然返事はこない。

「クリーン」

 初歩的な魔法で汚れを落とし、服を着替える。

「身支度は完了、これ食ったら早いけど行くか」

 朝飯はフルーツに限る、手っ取り早く食えるし安いし美味い上に栄養もある。

「ごちそうさま、行きたくねえけど仕事行くか〜」

「いけね、商売道具アイテムボックスに入れとかないとな」

 護身用の剣と煙玉をボックスに仕舞って仕事の準備は完了だ。

「行ってくるよアメリ」

 早朝なのに日差しが強い、今は異常気象とやらで朝も昼も関係ない、最近では男の人も日傘をするようになって時代感じる。

 俺の場合仕事場に入ると天気もクソもないからあまり関係ないんだけどな。

 街で唯一の転移テレポートスポットがある役所に向かう。都会にはいたるところにスポットがあるみたいだから羨ましいと思う反面、健康に悪そうとも思う。

 そんなしょうもないことを考えて歩いていると、いつのまにか役所に到着していた。

 役所の営業時間は10時からだ、現在時刻は7時半役所に誰もいなかった。

「始業前の役所は静かだな、転移テレポートスポットも誰もいないから静かな上に待ち時間ないし」

 転移テレポートスポットは本来待ち時間が長く便利そうに見えて割と不便なスポットなのだが、早朝と深夜は超絶便利なスポットになるのだ。

転移テレポート

 俺がそう唱えると、スポットが指定した場所に飛ぶようになっている。

 原理は謎だ、仮説では座標があーだこーだって学者さんが言ってたのを記憶している。

 そんなことは放っておいて、目的地まで転移できるのは便利、これが無ければ働き口もないこんな田舎じゃ俺は無職になってただろう。

「ナナシさんおはようございます!」

 転移完了したと同時に、いきなり挨拶してきた相手は受付の女、名前はロンリーさんだ、苗字は知っているが名前は知らない。

「ロンリーさんおはようございます、今日も元気ですね」

「ナナシさん!朝早くから来てどうなさったんですか?」

「いい感じの仕事が取られる前に来た感じです!理由はそれだけです」

 女の人が相手だと口下手と女性耐性の無さが相まって変な感じになってしまう。

「ナナシさん大変言いにくいのですが、今日はあなたでも行けそうな良さげ依頼はありませんよ…」

 彼女は曇った表情で答えた。

「そんな気を遣わなくても大丈夫ですよ!俺が弱いのが問題なんですから」

「そんな卑下しなくても…でも行くなら気をつけてください、パーティーを組めば楽になる依頼も多いと思うのですがナナシさんはソロに拘ってますもんね」

 別にソロに拘ってるわけではないのだが、それを言うと長くなりそうな雰囲気なので、適当に頷いて、それっぽいことを言う。

「ソロは稼ぎを分配しなくていいですからね、パーティ組んだら僕生活できなくなっちゃいますよ」

 人を納得させる方法で最も効果的なのは金のことだ。

 関係が深いとごちゃごちゃ言ってくるかもしれないが、そこまで仲良くない相手には効果的だ。

「そうですか…」

 肩を落として彼女は答えた。

「大丈夫ですよ!危ない依頼は受けませんから!僕弱いですし!、いい時間になったので依頼みてきます。」

 効果的なのはいいが、相手を余計心配させてしまうのが悪いところだ。こういうはしんみりとした時はもう行きますよ!アピールをするに限る。

「もうそんな時間ですか、なるべく簡単な依頼にしてくださいね?心配ですから」

 ロンリーさんほんと優しすぎる、俺が陽キャなら告白してたかもしれないと心中で呟いて頷いてその場を去った。

 2階まで上り板に貼り付けられている依頼に目をやる。

【急募 ダンジョンで取れる鉱石を適当に10個納品報酬10000P】

 割とうまい依頼があった、鉱石を問わないのは少し気がかりだが労力の対価としては破格だ、この依頼を受けることにするか。

 依頼は紙取った瞬間に開始される、カウンターで受理してもらう作業は必要ない、昔は受理してもらう必要があったみたいだが、人件費カットのためにこの技術を導入したとかなんとか、まあそんな豆知識はどうでもいいか。

 簡単なダンジョンに繋がる転移テレポートスポットがあるのはこの建物を出て東にある洞窟だ、普通に行ってもそこまで遠くはないのだが、30分はかかる、歩いてもいいのだが、面倒だから俺はいつも簡易転移ランダムテレポートを使用している。

 簡易転移は適当なダンジョンに転移してしまうという欠陥アイテムだ、その代わり安く買うことができる。使いまくれば実質任意で行きたいダンジョンに行ける優れものだ。

「ダンジョンだけじゃなくて、街に転移できる簡易転移あればいいんだけどな」

愚痴をこぼし、一呼吸おいてからポケットに入れていた、転移結晶テレポートクリスタルを取り出し砕く。

「転移」

 そう唱えると俺は最果てのダンジョンに転移していた。

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割と強いスキルを持ってるが、リスクが高すぎる件。 やまもと @Shinji000

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