第67話(最終話)
「……。」
あぁ……。
千景さんから、聞いたのかな。
「ごめんなさい、おかあさん。」
あんな屑野郎でも、
一応は母さんの戸籍上の兄なわけだから、
もう少し、温和な処理をすべきだったのに。
「……
謝るのは、私のほうよ。
ありがとう。
ありがとう、満明。」
あ。
……っ!!
「し、しなくていいっ!
そ、そんなこと、
ぜったいしないでっ!!」
ど、土下座なんて、
絶対に
「……
私のせいで、
親戚づきあいもできず、
お年玉もあげられず
「いっぱいもらってるっ!!
おとしだまなんて、いらないっ!
はたらいてぼーなすもらえばいっしゅんだよっ!!」
「でも、
いとこも
「いらないっ!!
ぼくは、せかいじゅうで、
おかあさんだけいればいいっ!!!」
……
あ。
うわ。
さ、さすがにいまのは
は、はずか
!?
「……
ちょっと、言いすぎたわね。」
ま、まどかちゃんっ。
あ、あぁぁ。
なんか、めっちゃ複雑な顔してる。
え。
「大丈夫よ、まどかちゃん。」
あ、頭、
撫でて貰ってる。
いいなぁ……。
「男の子はね、
10歳くらいまでは、母親に甘えたいものよ。
あっという間に振り向かなくなるの。
哀しいくらいにね。」
「……ほんとう?」
「ほんとよ。
ね?」
い、いや、
ここ、頷くのも頷かないのも地獄じゃねぇか。
*
「そっちは、うまくいったみたいだね。」
花梨の部屋、
来るの、久しぶりだわ。
三か月前は、徹底的にこの部屋を探しまくったから、
不思議な感覚だよなぁ。
「こっちの話も、少しだけしておくと、
速水製薬は、創業家が代表権を手放した。」
あぁ。
「じしゃかぶがい?」
「そう、なる。
改めて増資するそうだよ。」
……そういう決着、か。
一応、現金の個人資産は残るわけだから、
家が無くなったわけではないが。
「速水和俊氏は出家したそうだ。」
は。
「俗世と縁を絶ちたくなったようでね。
高野山に入ったらしいよ。」
な、なんて古典的な解決策。
「まぁ、贅沢三昧の妻の面倒を見るのが
嫌になったのかもしれないね。」
……あぁ。
せっかくの株式譲渡益が蕩尽されそう。
「はやみふうたは?」
「妻方の東京の親戚の家に移った。
中学入試を理由にね。」
なる、ほど。
火種が消えたわけではなさそうだな。
「きみが思うほどには悪い子ではないのだけどね。
あの家庭環境では鬱屈するしかないだろう。」
……わからんでもない、か。
産まれてきたことを心から厭うていそうだ。
「鷹野未来君は、大人しく勉強してるよ。
親としては、中学入試でこの街から出すつもりらしい。」
こっちも同じか。
ほとぼりが覚めたら地元へ戻すのかもしれないな。
大学卒業くらいのタイミングで。
……
でも。
「……あぁ。
これで、本当に抜けられたかどうかは、
正直、分からない。
慣性ってものもあるだろうしね。
ただ。」
ん?
「……
きみにわかって貰うわけにはいかないだろうが、
こんな感情は、はじめてなんだよ。」
「るーぷの、そとへ、
でられるってこと?」
「……
それも、だが。」
そう、いえば、
「あのきれいなこは?」
「……あぁ。」
あぁ、って。
「あの娘は、
紙屋奏音といって」
は?
「おんなのこだったの??」
「は?
きみ、あの娘がオトコに見えたのか?」
ぐっ。
い、いちばんやってはいけないやつをっ。
「まぁ、いい。
奏音は、ネット上で知り合った。」
花梨は、ネットって言うんだよな。
21世紀を経験してるだけある。
だって同い年だし。
「どんなトコ?」
「自殺志願者の掲示板だよ。」
ぶっ。
それはまた香ばしい。
っていうか、
「かりんちゃん、
じさつなんてかんがえてないんじゃ?」
存在を掛けて戦わなければいけないものがある。
そういう人間は自死を選ばないだろう。
「……
そうでもなかったぞ。」
え。
「元気そうに見える子どもキャラを演じ続けると、
心が乾いていくんだよ。」
あ、ああ……。
こんな感じで、根が昏いから。
中身、30代の事務員だもんな。
「いずれにしても、そこで知り合った。
ちなみに、奏音は7歳だ。」
8歳児が、7歳児とネット上で自殺の相談をしてるって、
病んでいるにもほどがある。
黎明期のネットってそういうアングラさがあったわ。
だったら
「なんで、あんなちかに、
いっしょにいってたの?」
「死ぬつもりだったんだろうよ。」
え。
「あぁ、そうだ。
きみに、ひとつ、
言っておかないといけないことがある。」
ん?
「きみ、来年くらいから、
顔、替わるって言ってたらしいな。」
げ。
なんで、そんな情報が。
琢磨さんと繋がってるってこと??
「どうも、不思議な事を言うと思ってたんだよな。」
は?
だって、
「しょたこんって
9歳くらいまでじゃないの?」
「……
はぁ。」
あ、
なんか、すごい軽蔑した眼で見られた。
「ショタコンは、
狭義でも第二次性徴期の開始まで。
つまり、12歳前後までだ。」
え。
「ちなみに、広義だと
16歳~18歳くらいまでを指すこともある。」
……
は?
「それに、こっちのきみは、
かなり中性的な顔立ちだろ。」
こっち、って、
ん?
「少なくとも、あと3年間、
場合によっては、10年間くらい、
きみは、あらゆる世代の女子に狙われ続ける。」
は
はあぁぁぁぁっ!?
「だ、だって、
しょたって10歳になったらこうかがな
「その知識、
どっから入ったかまったくわからないが、
完全な誤りだぞ。
きみの言う通りだったら、
ジェ〇ー氏の件とか、どう説明する?」
んごっ!!
た、確かに、
あれは、14歳くら
っ!?!?!?
「清潔感があって、中性的で、眼が綺麗で、
体力もあって、スタイルはスレンダーな筋肉質。
漢気も、勇気もあって、溢れる知恵もあって、
気配りもできて、落ち着いていて、優しくて、包容力すらある。
ちょっと抜けてて、子どもっぽいところも残ってるのに、
たまに遠くを見る視線は、ミステリアスですらある。
少女漫画から飛び出たような無神経な存在とは、
まぁ、きみのことだな。」
え、えぇぇぇぇっ!!!
め、めっちゃウソくさいなそいつっ!
オトコにすげぇ嫌われ
「きみの存在は、半分以上チートだが、
同世代では、誰も、気づいてないだろ。」
た、確かに。
愛香ですら、疑ってはいない。
「私から見ると、
きみは、まずい選択をしたぞ。」
な、なんで?
「まどかといったん婚約してしまったほうが、
きみの身は、安全だったってことだ。」
!?
「まぁ、
12歳まで、
生きられるかどうか、見ものだな?」
ぶーっ!!
「おっと、通話だね。
失礼?」
っ。
「……
あぁ、うん。
愛香ちゃん。」
ぶっ!!
「うん、いるよ?
あぁ、まどかはいないよ?
ふふ、疑いぶかいなぁ。
替わろうか?」
か、花梨んっ!
お、お、お前、
な、なんで、そんな、
めちゃくちゃいいおもちゃを見つけたような、
たっのしそうな顔してんだよっ!!!
ピカピカの逆行転生は修羅場だらけ
完
(12歳編へつづく?)
ピカピカの逆行転生は修羅場だらけ @Arabeske
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます