第51話
「行方不明、らしいの。」
……は?
い、いかんいかん。
完全に素の顔になっちまった。
「どういうこと?」
あの、健康的に日に焼けた、
元気印の塊のような倉科花梨が?
「……
美紀さん、
あぁ、花梨ちゃんのお母さんね。
ついさっき、連絡があって。
花梨ちゃん、まだ、帰ってないんですって。」
「がいはく?」
同性の友達か、
あの三人の取り巻きの誰かの家とか
「……お友達の家には、一通り繋いだらしいわ。
皆さんご存じないそうよ。」
「なんにちめなの?」
「……今日で、三日目らしいわ。」
げ。
それって、湖水浴から帰った
当日からってことじゃん。
小学校3年生で、それは。
「けいたいでんわは?」
「……持たせてなかったらしいの。」
仮にあっても、GPSを搭載してないと、
位置情報の発見はできないわけだが。
「毎日、門限までには帰宅してたらしいわ。
こんなこと、はじめてですって。」
「けいさつには?」
三日も経ってるなら、
立派な失踪事件じゃないか。
「……あそこに出しても、
なにも出てこないわよ。」
うわ。
ゾクっと冷たい眼してるな、千景さん。
そ、っか。
まどかちゃんの捜索、
警察は実質的に失敗してんだよな。
名門、黛家の嫡孫で失敗するなら、
ちょっといい家柄くらいの倉科家クラスでは、
相談を受け付けて、所轄の女性警官が、
通り一遍の捜索をするだけで終わりそう。
でも。
「かりんちゃん、しってるひとおおそうなのに?」
倉科花梨は、グイグイ迫ってくるタイプのコミュ強だ。
あれほどのインパクトなら、近隣住民は、皆、知ってるだろう。
「……そうなのよ、ね。
そのへんも聞いたんだけど。
美紀さん、ちょっと、追い詰められちゃってるみたいで。」
あぁ。
一見しかしてないけど、神経質そうな感じしたもんな。
にしても、可愛い盛りの8歳児を二日間ほっといたっていうのは
って。
「まどか、ちゃん?」
う、わ。
めっちゃふんす顔してる。
ぜんぶ聞いてるな、これは。
「さがすんだよ、ね?」
は?
「みつあきくん、
かりんちゃん、さがすんだよねっ?」
う、わ。
なんだ、こりゃ。
つぶらな瞳が、キラッキラしてる。
大冒険Ⅲくらいに思ってるんじゃないのか、これ。
いや、情報がなさすぎてアテが全然ないんだけど。
どっから手をつけたもの
って、探さなきゃダメなの??
……
はぁ。
ダメ、だよな。
この状態のまどかちゃん、止められっこないもの。
「……
携帯、持って行きなさい。」
う、わ。
千景さん、まどかちゃんの説得を放り投げてる。
当然、か。
黛まどかちゃんにとって、
倉科花梨は、大切な友達なんだから。
「いい?
くれぐれも、危ないところに行かないこと。
わかったわね?」
「うんっ!」
だ、だめだ。
まどかちゃん、全然懲りてない。
っていうか、千景さん、こっちを見てるじゃねぇか。
ああ、もうっ。
「はーいっ!」
「大嘘つきの顔ね。」
げっ。
めっちゃバレてる。
「……
まぁ、いいわ。
きみなら、二次災害は起こさないでしょうし。
必ず、定時連絡しなさい。二時間ごとよ。」
「うんっ!」
本部への報連相、とっても大事。
って、山岳救助隊かな?
「いこっ、
みつあきくんっ!」
うわ。
まどかちゃん、手を引っ張ってる。
なんでこんな嬉しそうなの。
*
さて、
ほんとにどこから手をつければいいのか。
……
いちばん最初は、琢磨さんなのかもな。
まどかちゃんに近しい人物の情報はぜんぶ精査してるはずだ。
千景さんよりも詳しいかもしれない。
その前に、
母さんたちに報告しないとだな。
二人とも会社で仕事中だから、電話のタイミング難しそうだけど。
あぁ、メールを使えないのが痛い。
やっぱり、どうにかして家にパソコン入れないとな。
でも、この頃ってまだ、光通信じゃないか
ってっ!?
「!」
ま、愛香っ!?
「おはよう、満明君。」
う、うわっ。
な、な、なんで!?
コイツ、まどかちゃんが家にいる時は、
こっちに来ない程度の不文律は
「ふふ。
うちにもあったのよ、電話。」
げげっ。
先回りしてやがる。
関係、あったのか。
って、なんでだよ。
お前なんて、こっち来て、
まだ半年も経ってないだろが。
「乗って、満明君。
きみたちで最後だから。」
は?
って。
国産最高級車のオフホワイトシートに座ってるのは、
文果と、美奈ちゃん?
あぁ、美奈ちゃんは友達枠だもんな。
文果はなんでよ?
「……とおい親せきよ。」
は?
それ、初耳だけど。
まぁ、分かるわけないか。
倉科花梨のことなんて、聞いたことねぇもんな。
「ほら、
まどかも乗って。」
笑顔で悠然と近づいていった愛香は、
ちょっと仏頂面になりかけていたまどかちゃんの耳元へ寄ると。
「!?」
なにかを囁かれたまどかちゃんが、
顔を真っ赤にしたまま、
豪奢な白亜の日本車に吸い込まれていく。
「さ、満明君。
最初はどこへ行くの?」
って。
どうして俺が指示することになってんのよ。
倉科花梨のことなんて、マジでなんにも知らないんだけど。
い、や。
知っていくしか、ない。
俺が、目的を果たすためには、
倉科花梨は、避けて通れない存在なのだから。
……
っていうか、愛香、
なんでそんなに興味津々な顔してんだよお前はっ!
ピカピカの逆行転生は修羅場だらけ
第5章
了
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