第42話
……出待ち、なぁ。
さすがに新聞社のインタビューに割り込む気はないわ。
まぁ、警察さんいるし、千景さんの望まないことにはならないだろ。
にしても、ガラケーの電波入らないっての、
セキュリティ上致命傷じゃねぇか。
まぁ昔の公共建築物あるあるかもしらんけど。
!
……
う、わ。
なんか、めっちゃ騒がしい嫌なオーラが。
あ。
あぁ……。
例の政治家先生一行な。
授賞式、存在感しかなかったぞ。
にしても、ぜんぜん記憶がない。
一応、地元選出の国会議員くらいは覚えてたと思うけど。
下院じゃないほうだから?
……
う、げっ……。
近くで見るとめっちゃ悪そうなオーラのカタマリだな。
さすが任侠と杯を交わしただけある。
高級な紺のスーツがでっぷりテカテカしてんなぁ。
まぁ、あの稼業、線の細い奴じゃ勤まらないわなぁ。
支持者連中からしてそういう奴らなんだろうし。
SPが2人と、おつきが5人くらい。
こいつらの移動費も税金か。
少なくとも1人はグリーン車。
いろいろカネかかるよなぁ。
……
ふぅ。
去っていったか、議員一行。
威圧感しかなかったなぁ。
控室対応する市役所の連中、地獄だな。
……
ん?
……
あいつ、なんで。
っていうか、
おか、しい。
なんていうか、最初の頃に見たような。
いや、そんなのの比じゃねぇぞ。
(それでね。
皐月愛香さんのことだけど。)
……っ!
ま、まさか、
……
しょうがねぇな、もうっ!
「まなかちゃんっ。」
「!?」
う、
ぁ、っ……。
な、
な、なんて顔してやがるんだよっ。
眼が、死んでる。
この世に、いない。
あの時の佐橋母みたいな、
この世のモノを写さない、虚ろな瞳。
な、なんで……?
いや、やっぱり、
そういうこ
ええいっ。
「!!」
「おはよう、まなかちゃんっ。」
後ろにまわってふわっと抱きしめ、耳でささやくと、
皐月愛香は、はじめて息をしたロボットのように、
ぎこちなく首を廻して、こっちを見る。
……あぁ。
ちょっとだけ、眼が、戻ってる。
つっても、いつもとだいぶん違うな。
やべぇレベル2.6くらいか。
あ。
なんか、
オイルが差していくように、
榛色の印象的な瞳に、光が、戻って
「……
満明、くん?」
「うんっ!」
「……
そう。
まどかちゃん、ね。」
「そうだよっ。」
なんだ、いまの間は。
なんでコイツが知ってるかわからんけど。
「……
ふふ。
きみって、ほんとにわっるいよね。」
だいぶんいつもの感じに戻ったな。
さっきのはなんだったんだ。
すっと身体を離すと、
愛香はほんの少し切なそうに榛色の瞳を濡らし、
じぃっとこっちを見てくる。
「……
悪い素材じゃないわ。
どうしたの?」
え?
あぁ、服な。
「かしいしょうだよっ。」
「……そう。
いいわ。いい見立てね。」
さすが千景さん。
馬子にも衣装よなぁ。
「うんっ。」
「……
あまり長く、
その恰好でいないほうがいいわ。」
え?
「ふふっ。
ほんと、バカね。
きみのほうがめだ
っ!!!!!」
ん?
え゛
「……
ふふ
ふふふふ。」
な、なんだ。
なんなんだコイツ。
「探したよぉ、まなかちゃん。
ココにいたんだねぇ。」
7月末なのに、
光沢のある黒い薄手のジャケットに、
ワインレッドの高そうなシャツ
「……
ど、
……どう、し……
……いま……に………っ」
一見、顔、整ってるのに、
顎、ちょっとひん曲がってて、
眼から溢れるどす黒いオーラが禍々しくて、
めっちゃくちゃ、やべぇ。
!?
ま、まさか、
こ、コイツが、千景さんの言ってたっ!
ならっ!
「まなかちゃんっ、
はやくぼくのうしろにっ!!」
「っ!?」
う、あ。
愛香、足元から震えてやがる。
「……
ほう?」
こ、コイツが。
コイツ、こそがっ。
「……
ふふ、
ふふふふ。
いぃい、だろうっ。」
ぐっ!!!!
い、いま、
8歳児に向かってめっちゃ本気でナイフ刺してきた。
こんなでっかいホールの通路で。
く、狂ってる。
れ、レベル7、
地〇破壊爆弾クラスのやべぇやつっ。
前世の中でも、こんなの、一回し
っ
ぁぅっ!!??
「!」
うぎゃっ
か、貸衣装がぁっ!
な、
ろ、ろ、六桁飛ぶじゃねぇかっ!!
ゆ、
ゆ、許さねぇぞっ!!
「……
ふふぅっ。
いい、ねぇ……
いい瞳、だねぇ……。」
は?
「アドレナリンがふつふつと溢れてくる。
はは、ははは。
恍惚としてきたよぅっ。」
う、うわ。
コイツ、マジモンのクッソやっべぇやつだっ。
ナイフ、舌でベロって舐めるやつ
39年の人生ではじめて見た。
「だいじょうぶだよぅ、
いとしの愛香ちゃぁん。」
あの強気の愛香が、
背中で、がったがた震えてる。
もうちょっと背、高くないと、護るもんも護れねぇっ。
「いろいろと、手古摺らせてくれたようだけど、
ぼくがちゃぁんと、この手で、
しっかりと送ってあげるから。
……
ふふ、ふふふふ。」
……くっ。
下手によけたら、愛香に当たる。
陽動しようとすれば、愛香が無防備になる。
そもそも、いまの愛香じゃ、一歩も動けない。
どう、したら。
こんなの、これから、いくらだって
「……
ふふ、ふふふ。
そう、だねぇ。
僕はやさしいからさぁ、
愛香ちゃんがさみしくないように、
この子も、いっ
がっ!!!」
……
は?
めっちゃ、前のめりで
オデコから倒れたけど。
って
え。
「ま、まどかちゃんっ!?」
貰ったトロフィーでしっかり殴ってる。
いや、ふんすして、
いや、
血こそ出てないけど、
あれ、内出血で
いや、まぁ、
確かに少年法からすれば
傷害罪にゃならないけ
っ!!
お、起き上がってきたぞっ。
「こ、こんのガ
……
あ。
まどかちゃんに、見とれてる。
そりゃまぁ、外見の儚さでいえばまぎれもなく天使級
じゃ、なくてぇっ!!
「けいさつのひとっ!」
まどかちゃんにくっついてるはずだろっ!!
「!」
「ぼーっとしてないで、
たいほしてっ!!」
「!?」
う、うわぁっ。
さ、三人もいたのかよっ!
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