第33話
っ!
「へぇ、
もうそんなに仲良くなってるのね。」
こ、皐月、
お、お前ぇっ。
劫火めがけて灯油をぶちまけるような言いぐさをっ。
って、いうか。
「いっしょにきたの?」
まどかちゃんと、文果。
三人しっかり傍にいる。
「そうよ?
男子、みんないなくなっちゃったから。」
はぁ?
っていうか、それ、遠足として終わってるんだけど。
「真理せんせに言ったの?」
な、なんだよ。
めっちゃ意味ありげに微笑んでるけど。
は?
「ほら、黛さん。」
まどかちゃんが、
みんなが、見てる前で、
むぎゅっ!
「!?」
え、えらい力、強くなってるな。
は、儚い系超絶美少女なのに。
もうちょっと強くなると鯖折りされそうだわ。
こ、
こうなった、ら。
「っ!?」
なるべく、ふんわりと抱きしめる。
壊れ物を、くるむように。
「……っ。」
思わず。
「……なにがあったの?」
「……
きみ、さ。
こっち見ちゃだめよ。
意味、ないじゃない。」
だって、なんもわかんねぇもん。
っていうか、文果の眼が怖いんだけど。
*
「……あぁ。
佐橋さん家の娘、ね。」
千景さんのほうは知ってんのかよ。
琢磨さんの身辺調査かな。
「そうよ。
まぁ、わかったわ。
まどかはいいのね?」
「うんっ。」
なんなら、ちょっと喜んでる。
まどかちゃんは、佐橋さんを友達だと認識してるようだ。
「じゃ、いいわ。
二人であそんでらっしゃい。」
「……。」
なんか、千景さんが、
俺だけ呼び止めようとしてるんだよな。
「まどかちゃん、
後でそっち、いくからね?」
「う、うんっ……。」
……
なんていうか、めちゃくちゃ後ろ髪を引かれるな。
琢磨さんの遺伝子、強すぎ……。
「……
はぁ。
君、なにしてくれたのよ。」
なんもしてないっての。
今回はマジで全然わかんねぇんだから。
「……
琢磨君そっくりね。」
は?
「ま、いいわ。
これ、君にも関わり合いがあることよ。」
え?
「佐橋さん、
君のお父さんが勤めてる会社の社長さんよ。」
はぁっ!?!?
「で、不渡りが一回出てる。
もう一度出たら、終わりね。」
あ、あっさりとおっしゃいますね……。
「まどかの友達だからね。
琢磨くん、入念に調べてたのよ。」
……
「ふふっ。」
え?
い、いまの話のどこに笑うところが
「これ、君のおかげなのよ。」
は?
どういうこと?
「前の委託先、
佐橋さんの家族構成しか調べなかったのよ。」
えぇ?
めっちゃ雑な調査だったってことじゃん。
「本人分は表面的にはそこそこ調べるんだけど、
それ以外は本当におざなりだったって感じね。
前の委託先は、わりと長いお付き合いがあったんだけど、
あんな関係と施設構造物を見逃してたって、
琢磨君が気合入れて長々とプレゼンしたら、
切ってもいいって許可が出たの。
あっちも長らく思うところがあったみたいだし。」
う、わ。
「それで、隣街の新しい会社に改めて出してみたら、
特記事項欄に出てて、ナヌってなったみたいよ。」
な、ナヌって。
そんな喋り方すんの琢磨さん。
奇跡の現役イケメンなのに、いろいろヘンだよなあの人。
「そろそろ君に話そうと思ってたから、
ちょうどいいわ。」
……。
「どうせきみのことだから、
会社を辞めさせる算段は整えてたんでしょ?」
げ。
めっちゃバレてる。
あ。
じゃぁ、千景さんが、後押しをしなかったのって。
うわ。
そこまでぜんぶ込みで父さんの会社に侵入させてたのかよ。
完全に千景さんの手で踊らされただけじゃん。
とんでもねぇ人だなぁ。
……まぁ、そうなんだよ。
だって、世界が手に掛かってた人なんだから。
「簡単に言うわね。
佐橋さんの会社には、潰れて貰う。」
……。
「君のお父さんは、
琢磨くんの会社に勤めて貰うわ。」
え。
「君のお父さん、かなり仕事できるみたいなのよね。
まぁ、琢磨くんの欲目もすこし入ってるけどね。」
そ、それは心底願ったりだけど。
「……君、ほんと、甘いわね。」
ぐっ。
そ、そう言われますと。
そう、なんだよな。
冷静に割り切ってしまうなら、
佐橋さん父の会社に潰れて貰ったほうが、
父さんの生存確率が劇的にあがる。
ただ、
それは。
「ま、いいわ。
私も少し、気にはなっていたから。
だから、君なの。」
は?
「君に、判断して貰おうと思ったのよ。」
な、なっ……
げ。
「そうよ。
佐橋さんのご両親が、どんな人なのか。」
でも、それって。
「調査会社は、外形しか把握できないのよ。
内面に踏み込むなんて、できない。
そこまで調査したらお金が掛かりすぎるわ。」
そ、それはそうだけど。
「それに。
君なら、適任でしょ?
特に、今回はね。」
……
っ!?!?
そ、そうか。
もし、佐橋さんの両親がリアルクソ親なら、
俺はなんの躊躇もなく、父さんのために破滅させられる。
「美奈ちゃんはね、
まどかの友達だから、
ちゃんと、考えるわ。」
うわ。
先回りして封じられた。
「あぁ。
まどかは、ちゃんと、閉じ込めておくから。」
と、閉じ込めるって。
千景さんが言うとリアルすぎて怖い。
「そのかわり、ね。」
……ん?
っ!?
こ、これはっ。
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