第21話 恐怖
「……っ……いてて」
頭がガンガンと痛み、こめかみを押さえる。
意識が浮上してくると、今いるのが見慣れない場所のベッドだと気付いた。
部屋の中央にある、やたらと広いベッドの上に上着と靴を脱いだ姿で寝ていたようだ。
「……ホテルか?何故だ?」
南條と待ち合わせをしていたバーで、隣に座った男と会話したのが最後の記憶だ。
祐希は、飲み過ぎた訳でもないのに意識を飛ばして見知らぬ場所にいる状況に戸惑う。
『ガチャ』
記憶にあった隣の席の男が、バスローブを羽織っただけで、タオルで濡れた頭を拭きながら固まる祐希に近付いてきた。
「やっと目が覚めた?大変だったんだよー、ここまで運ぶの」
祐希は、痛む頭を押さえつつも、横になっていた身体を起こし、男に尋ねた。
「俺、どうしちゃったんでしょう。記憶が無くて」
「何かねー、酔い潰れたー?っての?正体不明で休みたいってオタクが言うから、近くのホテルに運んだの」
祐希は、酒はそれほど強くない。だからこそ飲み潰れないように普段からしていたし、今夜はビール1杯だけだ。納得いかなかったが、取り敢えず礼を言う。
「そうでしたか。それはすみませんでした。私は帰りますので、ホテル代は精算していきます」
足をベッドから下ろそうとした祐希に、男が更に近付いて行く手を遮ってきた。
「そんなつれないこと言わなくても良いんじゃない?せっかくだから楽しもうよ」
「何をする。やめろ」
避けようと振り上げた祐希の腕は、立っていた男に掴まれ、ベッドへ縫い付けるように体重を掛けられる。
男は祐希をベッドに押し倒して、上からのしかかってきた。
男の顔が目の前にあり、祐希は嫌悪と恐怖で喉が締まり声が出せない。
「……っやっ……」
更に胸の上から男の体重で圧迫されて、掴まれた手首も痛いほど強く握られたまま、身動きができない。
祐希は、近付く顔から逃れようと、動かせる首を振り、闇雲に両脚を動かし、何とか逃れようと体を捻る。
「チッ、いい加減諦めろよ。往生際が悪いな」
男は、祐希ががむしゃらに動かす脚で蹴られて顔を顰め、不機嫌そうな声で恫喝する。
両手で掴まれていた手首を頭上で一纏めにし片手を空けると、着ていたバスローブの紐を解き、ぐるぐると縛り始めた。
「やめろっ、離せって!」
男のバスローブがはだけ、何も身につけていない肌や兆しかけた一物が見たくもないのに目に入る。
やっと声が出るようになった祐希が叫ぶが、全く聞き入れてもらえない。
男は、手首を縛り終えると、腹の上に馬乗りだった位置を腰の方へ移動する。自由になった片手で祐希のシャツをスラックスから引き出し、そのまま裾を首までたくし上げる。
「あぁ可愛らしい乳首だねー、どれどれ味見してみようか」
男は片手で、暴れようとする縛った手を防ぎ、頭を下げた。
「うっ、やめろ、やめてくれ」
『ピチャ、ピチャ』
男が乳首を音を立て舐めている。ザリザリと舌が這う感触が気持ち悪い。
首を振り過ぎて目眩がするが、祐希は抵抗をやめない。男を苛立たせた脚は、腰の上に乗られて封印されたが、全身に力を入れ続け、動かそうと暴れる。
男が少しずつ下がり大腿の上に体重が掛かったと思ったら、カチャカチャとベルトを外す音がしてきた。
「嫌だ。やめろ!」
「ヤダヤダばかり言わないの。今に良くなるからねー」
男は、片手で器用にベルトとボタンを外し、ファスナーを下げる。
ここまできて、初めて祐希は貞操の危機を実感し始めた。同意もなくこうまでするこの男は、最後までするつもりなのか。
この前やっと南條と結ばれたばかりなのに、何でこんな事になったんだろう。
萎えた性器を下着の上から撫でられ、祐希は絶望感を味わっていた。
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