第10話
「な、ない…!?ない!?いったいどこに行った!?」
恐ろしい雰囲気だった国王との面会を終え、自室に戻ってきたノラン。
無事に一難去ったことを喜ぼうとしていたのも束の間、彼のもとにまた別の一難が降りかかっていた。
「ぺ、ペンダントがどこにもない…!?アリシラとの婚約関係を証明するはずのペンダント…!!いったいどこに行ったんだ…!?」
そう、彼が今必死に探しているのは他でもない、自信とアリシラとの関係を確かなものとするはずのペンダントだった。
国王から叱責されている最中、ノランが心の中で頼りにしていたのがそれだった。
しかし今、彼の目の前にはそこにあるはずのペンダントが忽然となくなってしまっていた。
…それもそのはず、ノランとアリシラの婚約を証明するペンダントはすでにルルナによって持ち出されており、彼女の欲を満たすためだけにすでに破壊されてしまっているのだから…。
「ま、まずい…。このままでは僕とアリシラの婚約関係はすでに破棄されたことを暗に示してしまうことになる…。お父様にはすでに、何も問題はありませんと返事をしてしまっているんだぞ…?」
もしも、もしもこんなことが国王にバレてしまったなら、第一王子と言えども厳しい立場にさらされることは間違いない。
それを心から恐れているノランは、この状況から助かる方法をその頭の中で必死に考え始める。
「ま、待て待て落ち着け落ち着け…。アリシラとて、心の中ではこの僕との関係を諦めきれてはいないはず…。ここは僕の方から仕立てに出て、向こうに再びチャンスを与えるようにふるまえば、きっと関係を修復することは可能なはず…。少なくともお父様の前では、僕らの関係を悟られないように取り作らなければ…」
ノランの中では、まだアリシラは自分に対して気があるものであろうと思っていた。
一方的に婚約破棄を告げた自分の事を、向こうはまだ忘れられていないであろうと思っていたのだ。
「アリシラとてただの女。第一王子である僕の隣の席をもう一度用意する準備があるとでも言えば、きっとすぐに戻ってくることだろう。そうすれば僕が婚約破棄をしたことを国王様に知られることもなく、全て静かに事態を収めることが出来るはず…。よし、これで行こう…!」
事態の重さをあまり理解せず、まだいくらでも取り返しが効く状況にあるものと考えている様子のノラン。
第一王子としての自信がそうさせるのか、それとも彼自身の性格がその考えを導き出したのか、最後にたどり着いた結論がそれであった。
そんな彼が現実を知ることとなるのは、このすぐ後の事だった…。
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