第4話 とある噂
「ねえねえ、ララちゃん。巷では最近、こんな話が噂されているらしいの。人間界への秘密の抜け道があるって話。ママも興味を持ったみたいで私に教えてくれたんだけど、オカルト雑誌でもその話題が特集されるくらい1部の界隈では実しやかに囁かれてるみたい」
今日の授業は全部終わって、放課後に入った直後にアクアが私の席にやってきて、真剣な顔付きで言った。
それってまさに私にピッタリの話題じゃない?
私はすぐさまその話に食い付く。
「何それ!すっごく面白そう!ねえ、アクア。フウキとリュウキも誘って、その抜け道を探しに行こうよ。ついでに人間界にも観光しに行こう!」
ワクワクした声で今にも教室を飛び出したい気分でそう言うと、
「え〜〜、ララちゃん、あくまで噂の話だよ?本当かどうか分からないことなんだよ?」
アクアは困ったように笑う。
「何が、ついでに人間界にも観光しに行こう!だ。人間界に行くことは世界条約でも禁止されている。容易く行けるような場所じゃねえんだよ。アクアも、こいつは普通の思考回路してねえんだからそういう話をするのやめろって。バカだからすぐ真に受ける」
横の席にいたフウキが冷めた目で私を睨むと、口調を変えてアクアに優しく諭すように言った。
「はあーー、お前ってとことん可哀想なやつだよなあ。すーぐ色んなことを真に受けて。大体、行くことを禁止されているような場所への抜け道なんざ、上の偉ーい人がとっくのとうに噂が出た時点で見つけ出して規制かけてるっつーの。常識っつーもんを、早く身につけてほしいもんだね」
フウキの後ろの席にいたリュウキが会話に入ってきて、呆れたようにため息をついて肩をすくめる。
くっ、悔しいけど言い返せない……。
「フン、良いもん。みんな行きたくないんだったら、私1人で行くもんから!」
私が不貞腐れて言うと、
「お前、自分1人だけで行けると思ってんのか?バカにも程がある。絶対、迷子になるだろうな」
フウキがそこまでバカだとは思わなかったと言うように、目を見開いて私を見る。
「バカバカって何回も失礼な!行けるよ、もう子供じゃないんだから。私ってこう見えて、やればできる子、YDKなの!」
フフンと鼻を鳴らして言うと、アホかと頭を抱えるフウキ。
「
リュウキが嘲笑う。
な、何だとぉぉ!?
私はキッとリュウキを怒りのこもった目で睨んだ。
すると、リュウキはその視線を後ろにのけ反って躱すと、ヒラヒラと私に手を振る。
そんなフウキとリュウキの否定的な雰囲気に、アクアがおずおずと声を上げた。
「あの、私、ララちゃんと一緒に、噂の真相、確かめに行きたい。もしかしての話だけど、人間界に行けたら……魔法界にはない新しい発見ができるかもしれないって思ったの。それに、ララちゃんは確かに思い付きで行動しちゃうようなところがあるけど……それが結果として良かったことを何回も見てきているから」
最初は弱々しい声で話していたが、徐々に芯のある声に変わっていく。
ありがと、アクア。いつもこういう時に私の味方になってくれるよね。
私が感謝の意味を込めてアクアを見つめると、
「あと、今までのララちゃんと違って今回のララちゃんには何となく、大きな目的があるような気がするの」
アクアは静かな眼差しで私を真っ直ぐに見つめ返した。
ド、ドキィー、み、見抜かれてる!?
アハハー、そ、そんなことないよー。いつもの思い付きダヨー。
私が胸をさすりながら苦笑いを浮かべていると、
「俺も行くぜ。女子2人だけだと危険だからな。それに、俺も人間界には結構興味ある」
リュウキがアクアに続いて片手を上げる。
ホント!?リュウキが味方してくれるならこれ以上望むものはないよ、とても心強い。
嬉しくなった私はリュウキをじっと見つめる。
「別にお前の味方をしたわけじゃないぞ。お前らに何かあったら、スー様とマリン様に合わせる顔がないからな。特にララ、お前の母上のスー様はおっかねえ。氷漬けは絶対回避したいんだ。それに言ったろ?人間界には興味があるって。単なる知的好奇心さ」
私に見つめられて、リュウキは肩をすくめて言った。
今リュウキが言った、スー様は私のママ、つまりネージュのクイーンなの。で、マリン様はアクアのママ、ヴァダーの王妃様なんだ。
いつか直接見てほしいよ、ママはもちろんマリン様もすっごくきれいな人なんだ。
んで、話をこの場に戻すけど、否定的なのはフウキのみ。
ま、フウキなんかいなくても別に良いんだけどね!
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