第22話 新人戦2回戦2試合目②
「さて、ここからは反撃といこうか」
これまで後手に回っていたレオナルド・テリオスがクノウに向けて宣戦布告する。
「いままでは、手加減をしていたということかのう」
「そんな余裕だったわけではないんだけどね」
さわやかな顔で否定するレオナルド。
「そんな顔で言ったところで。わしの技はまだまだこれからじゃろうて」
「たしかにそれはやっかいだ。…だから」
レオナルドはクノウに剣を向ける。
「僕は今から君に近いところにいようかと思ってね」
「…なるほどな」
「なにがなるほどなんだ?迅」
大樹が俺にその意味を問う。
「あいつが近い距離にいれば、少なくとも爆発物を使うのを制限できる」
「…レオナルドくんが近くにいれば、クノウさんが巻き込まれますもんね」
「そうゆうことだな」
「でも、あの帯電自体は続いているわよ」
うさみはいまだある懸念を指摘する。
「何とかするんだろ」
「そこはてきとーなのね、あんたらしいわ」
感心するような落胆するような様子を見せるうさみ。
「分からんもんは分からん」
「…でもほんとにあれの攻略法なんてあるんでしょうか?」
「そもそも攻略する必要ねえじゃねえか」
大樹が不思議そうにする。
皆はきょとんとした顔で大樹を見る。
「あんた何言ってんのよ。あれをどうにかしないと永遠にクナイが飛んでくるのよ」
「そんなのさっきやってたみたいに防ぎゃいいじゃねえか」
「それもそうだな」
みんなしてフッと笑いがこぼれる。
「…わしは今5人に分かれておる。もし偽物ならそのまま爆発に巻き込まれても問題ないのじゃが」
「でもそれは5回耐えれば問題ないこと」
あっさりと爆発を耐える気満々のレオナルド。
「…なら、試してみるのじゃのう」
そういって札付きのクナイを構えるクノウ。
そしてそれをレオナルドに投げつける。
「『
身体強化の魔法をかける。
さっきより機敏になった動きでクナイを撥ね退け、そのままクノウに前進する。
「無駄じゃ。『
とばされたクナイがレオナルドに標準を定める。
「『
レオナルドの新たな魔法によってクナイが場外へはじけ飛ぶ。
無数のクナイは場外だけではなく、クノウ達にも襲い掛かり、5人中4人のクノウに当たり消滅する。
1人だけクナイを避けるクノウがいた。
それが本物だ。
「オリジナルの魔法!」
「レオナルド君が使う範囲魔法ですね~」
剣から放たれる剣圧によって自身の周囲に衝撃波を放つ魔法。
これでクノウを守るものがなくなった。
「くっ…」
「覚悟!」
レオナルドが剣を振り上げる。
だが、クノウは避ける素振りを見せない。
「…『
ビリビリビリビリッ。
クノウの魔法が発動する。
レオナルドの剣から電気が走り、そのまま全身を走り抜ける。
「………っ」
たまらず攻撃モーションをやめ、身をかがめるレオナルド。
うずくまるレオナルドを見て、即座に攻撃に転じるクノウ。
狙うは胸元の勲章。
だが、レオナルドも剣を振りながらそれに応戦する。
「ぬっ…」
クノウもあと一歩のところで仕留めきれない。
「しびれてろくに動けんじゃろうて」
構わず迎撃するクノウ。
手に持ったクナイが当たれば終わりなのだが、レオナルドの防衛に苦戦するクノウ。
「さすがは主席殿といったところかのう」
「…それは、おほめにあずかり」
「…しびれながらも防戦・会話ができるのは反則じゃろうて」
ここまでの連撃を行いながら、そのすべてを防がれる事態に納得がいっていないクノウ。
「出し惜しみなどしている余裕はないかのう」
クノウがボソッと呟く。
「他に、隠していることがあるみたいだね」
次から次に来る攻撃と身体の痺れに耐えながら、冷静に状況を分析するレオナルド。
「主席殿に隠しておけるほど、余裕はないでのう。…と、その前にもう少し体力を削っておきたいのう」
「そうなる前に決着をつけたいところだけどね」
「それは無理じゃのう」
にこっと笑いながら攻撃をやめ、印を結ぶ。
「『過電圧流』《あ・てんしょん》」
ビリビリビリッ。
再びレオナルドの身体中に電気が走る。
「……っ」
「まだじゃっ!」
さらにクノウは親指を噛み、その手を天に広げる。
「『
魔法を唱えた瞬間…、
ドォォォン。
クノウが伸ばした手に向かって雷が落ちる。
「雷だぁ」
「落雷だぞ、気をつけろ!」
「あの女の子に直撃したぞ!」
観客席もざわざわし始める。
「これは…」
思わず声がこぼれる。
「…クノウさん、大丈夫でしょうか?」
「自分に魔法を当てるなんて、自殺行為よ」
かのんとうさみも各々口を開く。
「…素晴らしいね」
レオナルドも思わず、
雷が落ちたところには、電気をまとったクノウの姿が。
「これはまた、凄まじいですね…」
実況の音無2年もあまりの光景に言葉が出ない。
「これは~我が身を犠牲にした見事な魔法ですね~」
解説の佐々木先生もその光景を褒める。
「先生、これはやはり自身にもダメージが?」
「さすがに無傷とはいかないでしょうね~。ですが、威力は目覚ましいものが見れると思いますよ~」
「なるほどですね」
「…その状態、きつくないかい?」
レオナルドはクノウに対して問う。
「奥の手じゃったんじゃか…、さすがにきついものがあるのう」
「…だよね」
「じゃが、主に勝つためにはここまでせんといかんからのう…ごふっ」
話しながら、クノウの口からは血が飛び出す。
「動くのも精一杯なのじゃが、早めに終わらせるかのう」
「…お手柔らかに頼むよ」
「覚悟。忍忍」
クノウは瞬時にレオナルドの前に移動し、拳を繰り出す。
ガンッ。
レオナルドは剣で防御するも威力を抑えきれず吹き飛ぶ。
「…くっ」
さすがのレオナルドも負傷を免れない。
「クノウの魔法、自殺行為に近いな」
「…どうゆうことですか?黒崎さん?」
「自分に雷をまとうことは魔法を通じて可能だと思うが、それを維持して戦闘するってなると電気の制御とその電機による蓄積ダメージが相当な物のはず」
「要するにかなりやばいってことか」
「まぁ、そうゆう理解で大丈夫だ」
また1から説明するのが面倒になり、大樹の発言に適当に相づちをうつ。
そんな会話をしている中、クノウはさらに2~3回レオナルドに攻撃していた。
「…なかなか効くね…それ」
「…そうじゃろう…」
レオナルドのダメージもそうだが、クノウの疲労も大きそうだ。
これじゃどっちが優勢かわからんくらいに。
「そろそろ限界なのじゃが、まだ勲章を割らせてはくれんのかのう…?」
クノウが苦しそうにレオナルドに問う。
「…そろそろしびれもなくなってきて、いい頃合いになってきたんだ。もうちょっとやろうじゃないか」
「…わしはもうお腹いっぱいなのじゃが…のう…」
今にも倒れそうなクノウだが、あと少しなら動けそうだ。
レオナルドの方はしびれがとれ、動きが戻ってくる頃だろう。
これは、次の攻撃がレオナルドにどれほど届くかがカギになってきているな。
「先ほどのうさみ殿の戦いを見るに、速さでは主を倒すことは出来ん…じゃから」
そういって、クナイを取り出すクノウ。
「これで、しまいにするかのう」
「もうおしまいにするのかい?」
「これ以上は身体が持たん…」
クノウは呼吸を荒くしながら、クナイに電気を集める。
身体中に纏っていた雷は次第にクナイへと移っていく。
「それにあたったら、痛そうだ」
「痛いで済めばいいんじゃがのう」
「僕の剣を持って、それをたたき斬ってみせるよ」
「やれるものならっ!」
ビュンッ。
全電気を纏ったクナイをレオナルドに向けて投げる。
「はぁぁぁっ!」
レオナルドは真正面から剣を振り下ろす。
ギィィィィン。
剣とクナイのぶつかり合いが大きな音を立てる。
うぉっ。
観客席まで届く風圧に思わず身体をそらす人々。
「うおぉぉっ!『
剣から吹き出る魔力により、クナイが押し返される。
誰もがクノウの敗北がよぎる。
「野郎がクナイをはじいた!」
「…クノウさん!」
「これで…!」
おわりだ。
とレオナルドが言い切る直前、
クノウは血を吐きながら印を結び、
「…『
最後の魔法を唱えるクノウ。
魔法が施されたクナイはまっすぐにレオナルドの勲章に向かう。
不意を突かれたのか、防御が間に合わないレオナルド。
「いったぁ!」
実況も確信し、その声をあげる。
「くそっ…」
レオナルドの勲章に当たる…寸前で、
バタッ。
クノウがその場に倒れ込む。
すると勲章に向かっていたクナイも追尾をやめ、地面に落ちる。
「……っ」
さすがのレオナルドも九死に一生か、思わず息をのむ。
「…身体が持ちませんでしたか~」
解説の佐々木先生も残念そうに呟く。
「こ、これは…最後のクノウ選手の攻撃が当たったと思いきや、最後の最後で力尽きてしまいました…」
「…あと一歩、だったのに…」
かのんも悲しそうにクノウを見つめる。
「えー、おほん。すごい戦いを見させてもらいました。激闘に激闘を重ね、試合に勝ったのは、レオナルド選手です!」
うおおおおおおおっ。
観客席からはここ1番の大きな声援が上がる。
いい試合を見せてもらい、大盛り上がりだ。
「…次は、俺の番か」
俺は静かにレオナルドを見つめる。
その前にお嬢の復帰が待たれるが…果たして。
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