第11話 新人戦1試合目①
実況解説席では、第1試合の予想を述べていた。
「佐々木先生、この試合はどう見るでしょうか?」
「そうですね~。まあ~次席である美登君の総合評価は高いですからね~」
「と、いうことは、下馬評通りの結果になるということでしょうか?」
「黒崎くんは~8人の中で1番最弱であることには変わりません~。ですが、未知という言葉が一番であることも変わらない事実なんですよね~」
「なるほど。実力は下ではありますが、意外性があると」
「予想通りに進むのもそれはそれで~というのもありますので、ほどほどにいい試合をしてくれるんじゃないでしょうか~」
「と、ということです。解説はここまでにしといて、始めていきたいと思います!それでは、学内新人戦第1試合開始!」
実況の音無2年が高らかに新人戦の開幕を告げる。
「俺はひ弱な凡人なんだ。お手柔らかに頼むよ、次席さん」
「…凡人?誰のことだ?」
…ボケてるのか?
俺が凡人以外の何になるんだ。
「…お前のことは評価している。公爵位の護衛という時点でおかしなことはないだろう」
「…過大評価だな」
話し終えたのか、美登は静かに日本刀を構える。
俺は、手に持っていた学園が使用している模擬剣を構える。
「…どうゆうつもりだ?」
「どうもこうもいい剣があったから使わせてもらおうと思ってな」
美登が不服用に聞く中、ステージの端では、
「…迅のやつ、なんで模擬剣なんて持ってんだ?」
「あれよね、煽るためなんじゃないの?どーせ」
「…心臓に毛でも生えてるんじゃないでしょうか?」
「なんか1本じゃ足りないって言ってたわ」
お嬢が答えを話す。
「あいつ、2刀流の使い手なのかよ」
「美登君が日本刀1本じゃないってこと?なのかしら」
「あいつの色って確か…」
「…紫色」
「いろんな想定をしたうえで多数の武器を使うのも択の1つってことよ」
「やる気ないふりして、準備満タンじゃない」
「華の檄が効いたんじゃねえか」
「ちゃんとやらない迅が悪いのよ」
ステージ端でお嬢たちが俺の話をしている…気がする。
「…ステージの端は盛り上がっているな」
「模擬剣がダセえとか言ってんじゃねえのか」
「…後悔しても遅いぞ」
颯爽とこちらに詰め寄る美登。
ガキイィィン。
金属音が響く。
「おぉ、怖い怖い」
美登は長い日本刀を巧み使いこなし、上下左右に振りかぶる。
俺は、剣をいなしながら打開策を考える。
…あいつが魔法を使う前に倒せればベスト。
だが、そううまくいかないのが現実。
幾度となく襲い掛かっていた日本刀がいつの間にか止んでいる。
「どうした?疲れたか?」
「…」
黙ったまま、日本刀を鞘へ納める。
…なんだ?
次の瞬間、………ヒュン。
風を切る音。
俺の左大腿部から血が噴き出る。
「…マジか」
「…『居合・翁』」
いくら何でも速すぎるだろ。人の技じゃねえ。
「先生…あれは?」
「あれは~美登くんが得意としている剣術の1つ。『居合』ですね~」
「居合…といいますと、帯刀してから強力な一撃を放つあれですか?」
「そうです~。彼の場合はその間合いは数十メートルでも届きうることができます~。人間技ではないですよね~。並みの魔剣士はできない芸当です~」
カチンッ。
再び、日本刀をしまう美登。
…魔法…なのか?身体強化だけで出来る技か?俺が見・て・からじゃおせえってか。
「抜く前に、避ける!」
「…遅い」
………ヒュン。
…頬を少しかすめたが、なんとか避けれた。
「…っぶねーな」
美登が動く前に動く。
口で言うのは簡単だが、慣れたもんじゃねえな。
ー観客席ー
「…ははっ、あれで1年かよ。俺じゃ勝てねーわ」
「なに言ってんのよ。2年の中であんたが勝てないんじゃ誰が勝てるっていうのよ」
「…あの1匹狼とかじゃね?」
「あれは、例外よ」
「そりゃ、そうか」
「でもほんっと、今年の1年生はすごいわね。あの子は魔力0なのよね」
「いやあ、これで将来も安定だねえ」
「誰目線なのよあんたは」
呆れた様子でため息をつく楓という名の女性。
「ああゆう奴、嫌いじゃないんだよなあ」
迅のことを見つめ、物珍しそうに観戦する今井 翔。
「…ん?こっちに気づいたか?戦闘中に?…面白いじゃん」
ーステージー
…左足と頬に傷。
動けないことはないが、あの剣をどうにかしないとな。
なんか、2か所くらいで視線感じるが。
試合見るのは当たり前か。
「よいしょっと」
俺は、腰に身に着けていた鞘付き剣を床にさす。
「…なんのまねだ?」
「とりあえず、これで正面は守れるかなと思ってさ」
「…それはお前の所有する剣だろ」
「それをどう使おうがこっちの勝手だが?」
会話の最中に静かに構えなおす美登。
「そんな身構えなくてもいいのにねえ」
「…次は、斬る」
言い切る前に、鞘から日本刀が抜かれる。
………ヒュン。
無音の技が、再び俺に向かってくる。
キイイィィン。
前方を守っている剣が当たり、ぶつかる音が響き渡る。
…ここ数十メートルくらい離れてるのに何で届くんだよ…
「…っ!」
立てかけてた剣がぶつかる音がしたのにも関わらず、俺の腹部が派手に斬られ、大量の血が噴き出す。
「迅っっっ!」
お嬢が叫ぶ。
「…『居合・二枚翁』」
…二振りか。
一振りではなく、二振りにすることで剣を躱し、俺に届かせる。
「…油断大敵」
「ちっ」
俺はバックステップし、美登から距離をとる。
「…少し離れたところで俺の刀は届くぞ」
「あぁ、そうかい」
このままじゃ打つ手なしだ。
もうここままリタイヤして…。
リタイヤの文字が浮かび上がり、ふと後ろを振り向く。
そこには、俺の勝利を信じて疑わない1人の女性が。
「…くそがっ」
おれは斬られた腹部を確認する。
幸い、深くは斬られていない。
「おぉーっと、黒崎選手。結構な深手に見えますが、大丈夫でしょうか?」
「う~ん。どうでしょうね~」
実況解説席では、終わり間近の雰囲気が出ている。
「迅!勝ちなさい!勝って私のところに帰ってくるのよ!」
お嬢が涙目になりながら、俺に檄を飛ばす。
…おいおい、血まみれの男にいうセリフがそれですかい。
「…わかりましたよ」
俺は2本の剣をとり、美登へ向ける。
「ということだ。お前には悪いが勝たないとダメ見てえだわ」
「…その状態で、何ができる?」
再び構えをとる美登。
「たしかになあ。このままじゃ俺の負けだ。…でも」
俺は、自身の右人差し指に付けている指輪をみる。
「…必殺技があるのが、お前だけだと思うなよ?」
「…っ!」
危機を感じ取ったのか、すぐさま抜刀する美登。
「おせえ」
俺の言葉とともに指輪が光り始める。
『世の理よ。統べるべき王のため我が身に纏え』
『
キイイィィン。
身体が斬られる音…ではなく、なにかがぶつかる音が聞こえる。
「…なに?」
美登が不思議そうに呟く。
美登の眼に映るのは、黒い外装をまとった男の姿が。
「…
「…それを、つくった?」
美登が再び不思議そうに問いかける。
同刻、ステージ端と実況解説席では、
「おい、華!あれって」
「あれは、なんなの!?」
「…すごい魔力量…」
「…あれは、迅の身近な人が作ったの。私が持っている『人工魔装』と同じもの。…でもあれはレベルが違う」
「先生!あれは!」
「…これは…驚きましたね~。未知とは言いましたが…これほどとは…『人工魔装』ですか…」
「『人工魔装』といれば魔道具を生成するというあれですか…?」
「それこそ、黒崎くんが使っている模擬剣などの魔道具と呼ばれますが~。彼の使っているものは
「えーと、より高精度は武器と言えば…生徒会長が使われている
「あぁ、確かに~彼の持つ剣は間違いなく『人工魔装』ですね~。『人工魔装』というものは、腕に自信がある人や努力でたどり着ける人ではなく、誰にも成しえることのできないほどの万物を作る人が作れる代物ですね~」
「天賦の才を持った人、というわけですね」
「そうゆう言い方も然りですね~」
「…これが今の俺の全力だ」
全身から流れ出る魔力量が、常人のそれではないことを物語っている。
その威圧は、立っているだけでも体力がすり減るほど。
真正面にいる美登が受けるプレッシャーはいかなるものか。
「…わりいな。終わらせてもらうぜ。この状態もタイムリミットがあるんでな」
…フッ。
ドォォォォォォン。
美登が日本刀を構えようとするが、数十メートルあった距離を一瞬で詰め、瞬く間に美登を吹き飛ばしていった。
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