第11話 カードブリーダー
「さっきのスキル、この後はどう使うんですか?」
妖精が周りをうろちょろと飛び回りながら聞いてくる。
「俺がモンスターを直接見れば使用可能になる。……さっそくお出ましだな。デュエル! マイターン、スライム、ゴブリン!」
剣を構える俺の頭上に使用したカードが現れ、キラキラと光を落としながら降り注ぐ。
これでゴブリンとスライムカードの効果が適用され、物理攻撃力と防御力は微増。
「おりゃ!」
動きの鈍いスライムに俺の剣が振り下ろされる。
モンスターは一瞬で消え去り、その場に魔核とカードが落ちた。
このモンスターが魔核になる仕様はゲームみたいですごくいい。
魔核が倒したという証明になるし、いちいち死体を運ぶという手間がない。
スライムとかゴブリンとか、あんなゲテモノの死体は運ぶだけで具合が悪くなりそうだ。
「ほんと、倒したモンスターがカードになるんですねぇ……ちょっと信じられませんでしたけど、実際に見たら信じるしかないですね」
「なんで俺が嘘付く必要があるんだよ。それにおまえ、鑑定でスキルの説明見たんだろ?」
「スキル鑑定を誤魔化せるスキルもあるんです。私の鑑定を誤魔化すのは至難の業ですが、それでも完璧とは思ってませんし」
「俺、もうちょっとスキルとか魔法とかの勉強するわ……」
他人が持つスキルにはまったく興味がなかった。
けど、こいつの鑑定とか受付嬢を操ったスキルとか、世の中には恐ろしいスキルがたくさんあるのかもしれない。
モンスターのことばかり考えていたので、その知識だけは普通の人よりもある。
ただ、人と戦うということを一切想定していなかったことに気付く。
「セット」
再度スライムとゴブリンの準備をすると、エロ精霊が眺めていたスライムカードが俺の手元にくる。
「うわっ! 毎回それしないといけないんですか? めんどくさっ!」
「うるせぇ。剣だって収めたり出したりするだろ。それと同じだ」
「ものはいいようですねぇ。てかスライム倒すのにスライムとゴブリン使ってたらもったいなくないですか?」
「おまえの為に見せてやったんだよ!」
妖精は『そうでした』みたいなことを言い、舌を出してコツンと自分の頭を叩く。
その仕草は可愛いし見た目も可愛い。
でもなんかイラッとくるのは俺が大人げないのか。
心まで17歳になったのかな……なんて干渉にひたっていると、妖精がスキルについて質問攻めしてくる。
「敵が見えたら使えるって気配を察知するだけじゃ駄目なんですか。微増するってどれくらいですか。その効果ちゃんと検証してますか。敵意がない人にも使えるんですか。そのスキルって私にも適用出来るんですか」
「おいちょっとまて、一気に質問しすぎだ。ほとんど答えられるけど、いきなりどうした」
「ハルトのことちゃんと理解してないと、イザという時に助けられないじゃないですか」
エロ妖精の言葉を聞き、ちょっと目頭が熱くなってしまった。
『そうだな俺が言ったことだ』とか言って誤魔化してみたけど、こいつ感情読めるんだったけか。
バレてないかな……今の俺の感情。
俺は悟らせないように、自然な感じで切り株に腰かけ、先ほどの質問に答えていく。
「気配を察知するだけでもカードは使用可能になる。但し……」
ゴキブリが部屋にいそうだとか、蚊が飛んでいたそうだとか、そういうのであればスキルは使用可能となる。
但し、犬が絶対にいないのに、犬に襲われそうだ。
こんな感じではスキルは発動できない。
ありえるかもしれない、実際に俺がそう思っている状態でなければ発動はできない。
「わかりました。では二点実験させていただきます。いま私、近くにゴブリンがいるって感じてますけど、ハルトは私の言葉を聞いてスキルが使用できますか」
「デュエル……。使えるな」
新しい発見だ。
ほかの人が気配を察知しても使えたのか。
「それではもう一点、私がいまからハルトを攻撃します。その時スキルが使えるかを試してみてください」
そういうと精霊は宙を舞い、小さな腕を広げる。
「殺す気でいきますよ。覚悟してください。常闇!」
「デュエル……使えないな。攻撃した?」
「淫夢の誘惑! 常闇! 常闇! なんで……」
ショックだったのか、疲れたのか、妖精はフラフラと空中から落ちてくる。
俺はそれを両手でキャッチ。
「そういえば常闇ってどんなスキルだ? おまえのカードにも載ってたけど」
「使ってみればいいじゃないですか!」
そのとおりで使う予定なのだが、よく考えたらレア度Aのカードが無くなるのはもったいない。
俺は機嫌が悪そうな精霊をなだめ、もう一度優しく聞いてみるが、教えてくれない。
しまいには、カードはプライバシーの侵害だと主張し、俺から取り上げようとしてきたので別の話題に素早く切り替え。
「えーと、次はカードの効果を把握しているか、だったよな」
俺は森に生えている、大人一人分くらいの太さの木を指さす。
「今の俺だとこれを一撃では斬り落とせない。けど、ゴブリンの物理攻撃微増の効果があれば一撃で斬り落とせる。防御力アップに関しては自身をつねってみただけで、いまだと痛い。効果がかかるとちょっと痛いみたいな感じかな」
レベル、攻撃力、防御力などは数値化されていない世界なので、実際のところ正確にどれくらいとは答えられない。
「わかりました。それでは私に使えるか試してみてください」
精霊がはいどうぞといわんばかりに腕を広げる。
「いやだから、戦闘状態にならないと使えないからまだ検証できないって」
「ほんと使えねぇスキルだな! 紛らわしい!」
使えないとか紛らわしいとかは置いておき、このへんが検証出来ていなかったのはぼっち冒険をしてきた弊害だ。
「まあいいです。それじゃあさっきのゴブリンのところに……ハルト! 伏せて!」
妖精が叫んだと同時に俺は伏せる。
すると、頭を上を火の玉が通過。
直後、爆音。
俺は妖精を抱えながら転がる。
いったい何が起こったのか、すぐに体制を整え火の玉が飛んできたほうを見る。
そこには杖を持ったゴブリンが醜悪な姿で立っていた。
「こいつは……ゴブリンメイジ」
★モンスター情報局★
ゴブリンメイジ:魔法を使えるゴブリンの一種。使える魔法は個体によって違い、複数系統の魔法が使用出来る場合、討伐ランクが上がる。
レア度:D~C *レア度は討伐ランクと同じ。
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