第8話 エロ妖精さんは優秀です


 第一級スキル鑑定士とは。


「人族における最上位鑑定ですね。もちろん私の鑑定より劣りますけど。スキル名が出てその効果がわかる。ほかにも名前、年齢、性別がわかる。これくらいですね」


 サラさんがどのような鑑定士であるのか、エロ精霊が耳打ちしてくれている。

 名前年齢性別は正直に報告しているので問題はない。

 だけど俺のスキル『カードブリーダー』は別だ。

 神から与えられて普通のスキルではないことはわかっている。

 それに『転生者』。

 これがスキルに載っているのがさらに不味い。

 

「うふふ。どうして望んでもいないのに鑑定されるか。そう思っていらっしゃいますよね」


「は、はい……」


 目の前に座るサラさんの笑顔が怖い。

 さっきまでは人懐っこい笑顔に見えていたけど、今は腹黒人間のそれにしか見えない。


「ハルトさんは職業を付与術師で登録されていますが、今もそれで間違いありませんか?」


「は、はい……」


 俺のモンスターカードは戦闘で使用すると自身が強化される。

 前に付与術師によるステータス強化を見たことがあるが、強化される際、体に見えるエフェクトが俺のスキルとほぼ一緒だった。

 なので俺は自身のスキルを誤魔化すため、職業は付与術師で登録した。


「付与術師って自身を強化できませんけど、いつもお一人でどうやって戦っているのですか?」


 衝撃的な事実……。

 たしかに前に見た付与術師も仲間にそれを使っていたけど。

 俺は腰に着けている剣に手を当てる。


「ふ、付与術師のスキルは飾りみたいなものですからね。本業は剣士、剣の道に生きてます!」


「そうですか。付与術師ってスキルじゃないんですけど? 職業付与術師と書いたのであればその根拠となるスキル名を答えていただけますか。わかりますよね。ご自身のことですし。もし勘違いしているようでしたら、こちらでスキル鑑定して適切な職業にしますので」


 サラさんの怒涛の攻撃。

 俺はクリティカルダメージを受け、既に放心状態……。

 下手な嘘をついてさらにボロが出たら最悪冒険者の資格を剥奪される可能性もある。

 それならいっそ正直に話してしまうか。



『インムのユウワク』



 サラさんと目が合わせられなくて、俺は数分間下を向いている。

 お互い無言、あれから一言も話していない。

 あと一言、話しかけてくれれば、それをきっかけに全て話す!


「あの……ハルト」


「は、はい! 全て話させて……え?」


 顔を上げると、サラさんはなぜかギルド制服の上着を脱いでいた。

 つまり今は下着、上半身は黒の下着だけ……。

 別にこの部屋暑くないけど。

 俺は再度下を向き、一度深呼吸。

 そして勢いよくまた顔をあげる。


「あのね……ハルトの顔は……その……別に悪くないと思うの……でも私は、ギ、ギルド長のことがす、す、す!」


「え!? サラさん!? え!?」


「好きなの!! だからハルトとはエッチできない!!」


 バタン!!



 上着を手に持ち、上半身下着のまま駆け足で部屋を出て行くサラさん。


「いやぁ~。普通の人ならあそこでエッチ出来るんですよ? でも思っていた以上の精神力です!」


 もう誰がこの状況を引き起こしたのかはわかっている。

 エロ精霊はテーブルに置かれている水晶に乗り、聞いてもいないことを自慢げに語り始めた。


「あいつここに来る前に強化魔法を使ってます! しかも精神操作防御強化の魔法です! やられました! すみません!」


 俺はにこやかに首を横にふる。

 なんか俺が頼んだみたいになってないかな? そこらへん大丈夫?


「でもハルトも悪いですよ。ちょっと胸の一つでも揉めばたぶん大丈夫でした」


 俺は精霊を片手でつまみあげ、目の前にもってくる。

 エロ精霊は何を勘違いしたのか目をつぶって顔を赤らめている。


「あん……。だめ……」


「おいおまえ、精霊じゃねぇだろ」

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