第6話 下心無きプレゼント
プレゼントを貰って好感度が上がらない人はいない。
エロ精霊はそう言い切った。
俺もこれには賛同するが、シンシアさんはどういうものが好みなのかまったく想像がつかない。
これについてエロ精霊と相談し"あるもの"が最適だと判明する。
「ずばり宝飾品です! 身に着けてよし! 資産としても有用で気に入らなかったら売ることもできます!」
「売られたら俺泣くからな……」
深夜まで話し合った俺たちは、次の日の昼まで寝てから町の商店街へと足を運ぶ。
俺の今いる場所は海上に接している大きな町。
物流が盛んで、町の中心部にいけば様々な物が売っていて活気もある。
「10万ゼニーだと……」
ふらりと寄った屋台で売られている宝飾品。
ちゃんとした店で買おうとしていたので、ここで買うつもりはなかったのだが、まさか一番安い宝石でこの値段とは。
手持ちのお金を確認するとちょうど10万ゼニーはある。
冒険者ギルドにもお金はいくらか預けているので、全部合わせて15万ゼニーといったところ。
俺は一度屋台を離れ、エロ妖精と相談する。
「プレゼント、花束とかどうかな?」
「知り合いから花束貰って嬉しいですか? そういうのはお付き合いしてからプレゼントするものです」
冷静な顔でそう指摘する妖精。
言われてみればそのとおりだと思う。
「ぷ、プレゼントは特になしでデートに誘うというのはどうでしょうか」
精霊は小さい手を小さい口に当てて考え込む。
「シンシアさんは絶対に誘えませんね。そんな気がします」
「絶対なのか、そんな気なのかハッキリしてください」
「絶対に無理」
俺は宝飾品を買うの諦め、冒険者ギルドに向かう。
ここで一番安い宝飾品を買ったところでって感じだし、どうせ高い買い物になるならシンシアさんに似合ったものを選びたい。
そうなると今の持っているお金じゃ足りないわけで、仕事で稼ぐ必要が出てくる。
冒険者の仕事は依頼をこなすこと。
ということでギルドに向かっているわけだが。
「ハルトは見た目はいいんですから、シンシアさんに固執しないで、いろいろな人に声かければいいじゃないですか!」
慰めなのか精霊はそんなことを言ってくる。
見た目がいいとかカッコいいなんて言われたことがない。
精霊は今日は機嫌がいいのか、その後もいろんなことを提案してくる。
女の人に声をかけてくれれば私がその人のハルトに対する好感度をチェックする。
その数値を見て俺がアタックする。
上手くデートに誘いだして、そこでお酒を飲ませる。
注意力を散漫に出来れば、精霊は相手をエッチな気分にさせることが出来るとのこと。
それでそのままエッチなことをして恋人になればいい。
「どうですか! これが恋愛マスターの提案です。さぁどうぞ、実行してください!」
自信満々の精霊、俺はふと思った。
「エロ精霊は自分に対する好感度もわかるのか?」
「え? はいわかりますよ。ハルトが私のことをどう思っているとか、前に話した数値で」
「それ、けっこう辛くね?」
俺がそう話すと、精霊はものすごい早さで飛び立ってしまった……。
カラン。
冒険者ギルド内に入り辺りを見回す。
もしかして先に来ているんじゃ……と思ったが、そんなことはなく冒険者で賑わっているだけだ。
別に変なことは言っていないはず。
そう思ったから話しただけだし。
もし何か気にいらなかったのだとしても、精霊は元々気まぐれ、一緒に行動するということ事態が異常なことだ。
俺はそう自分に言い聞かせ、いつも通り受付に仕事前の報告に行く。
冒険者は依頼を受ける以外で街の外に出る際は、どこにいつ戻るのかの事前報告が必要だ。
「近隣の森でモンスター狩りですね。お受けいたしました」
俺が紙を提出すると、テキパキと処理してくれる受付嬢。
このギルドで一番人気の受付嬢で、仕事が早くて見た目も動きも可愛いと評判になっている子だ。
そんな子なのだが、今日はなかなか冒険の許可を出さない。
あとは「お気をつけて」みたいなことを言われて、写しの紙を受け取れば俺はこの場から立ち去れるのだが、その紙が渡されない。
「あの……なにか間違ってましたか?」
「私のところで受付したのは初めてですよね? ハルトさん」
この子の受付は大人気のため、いつも混んでいる。
俺はそれをさけるため普段は男の受付係に出している。
「は、はい、初めてですね。なにか問題が?」
「そうですね。ちょっと二人で話しませんか? 冒険のアドバイスをさせていただきます。奥の部屋にどうぞ」
俺は言われるがまま、受付嬢と部屋に向かった。
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