第4話 見えないエロ妖精

 シンシアさんの下着は赤色


 これを聞いた俺は一瞬で頭に血が上り、激しく動揺。

 結果、テーブルに置かれていた水の入ったコップを倒してしまう。

 これによりさらに動揺する俺。

 そこに下着が赤色のシンシアさんが来るものだからもうパニック状態!



「気にしないでくださいね。はいこれ、本日のおススメ定食です」


「ほんと申し訳ございません……」


 自らが引き起こした一連の騒動が収まり食事が運ばれてくる。

 もう恥ずかしくてシンシアさんのほうを見れない。


「ご馳走様でした! そういうのです! 生野菜から焼きたてパンにレベルアップです!」


 人の性を食事にするエロ妖精が耳元で囁いて来る。

 完全にはめられた……。

 もうこいつとは関わらない。


「まあ下着が赤色なんてわからないですけどね」


 こいつ殺す。

 そもそもシンシアさんが派手な赤色の下着なんて着けるはずないと思っていた。

 俺的には白!

 純白の白だ!


「そうそう、そういう想像をしてほしかったんです」


 俺が耳元でしゃべるエロ妖精を掴み上げようとすると、ひょいと飛んでテーブルに降り立つ。


「まあまあ落ち着いてください。私もお腹が減ってたんですよ。ギブアンドテイクです!」


 俺こいつからなにかもらったか?

 などと思いつつも、俺も食事をとることに集中する。

 下手な動きをしたら周りにいる人に怪しまれる。

 ただでさえ騒ぎを起こしているんだし。

 


「人族はいいですよねぇ~。食事するだけで生きれるんですから」


 いつの間にか俺の腕の間にエロ妖精が腰を下ろし、おススメ定食のメインお肉をほおばっている。

 もし妖精が見えないのだとしたらお肉が空中に浮いて徐々に消えていく状況になっているはず。

 端の席だし、よほど俺に注目していない限りは気付かないと思うが。

 俺は注目を浴びないよう自然な感じで肉を取り返そうと試みるが、どうやらこいつは肉を返すつもりはないらしい。


「私の声も周りには聞こえないですよ。なのでいま話すと独り言のようになるので気をつけてください」


「知ってるよ。だからさっきから話してないだろ」


 小声で返す。

 てかこいつメインの肉全部食べやがった……。

 皿に残っているのは付け合わせの野菜だけ。


「ご馳走様でした。お礼に良い情報を教えてあげます。お店から出たら起こしてくださいね!」


 妖精はそう言い残し、俺の頭の上で寝た……らしい。

 仕方なく余った野菜を食べる。

 追加で料理を頼もうと思ったけど、店も忙しそうなので残りもので我慢した。


「今日は食べるの早いですね」


 急に後ろから声をかけられビクッとなってしまう。

 シンシアさんだ。


「いや……なんかいろいろ迷惑かけちゃったので……」


「迷惑だなんて、お水をこぼしただけじゃないですか」


 なんて優しい人なんだ……。

 と思いながらシンシアさんのほうを見ると、目線が俺の頭の上にいっている!?

 まさか頭の上の精霊に気付いているのか!?


「いやあ! 今日も美味しかったです! ご馳走様でした!」


 俺は急いで残りの野菜を食べて、シンシアさんの視線から逃げるように店を出た。




「おい起きろ! エロ妖精!」


 頭に乗っていたエロ妖精を手でつまむように目の前に持ってくる。

 目をこすりながら起きる妖精、本当に寝ていたようだ。


「なんですかぁ……」


「なんですかじゃねぇよ! シンシアさんお前のこと見えてなかったか!? いやあれ絶対気付いてたぞ!?」


「んなわけないじゃないですか。見えませんよ」


 なんでこいつはそんな自身たっぷりに言えるのか。

 現に俺には見えているのでなおさらその言葉に説得力がない。


「シンシアさんは必ず人の目を見て話すから! 今日はそれがなかった! 絶対に俺の頭の上を見てた!」


「それ見えたんじゃなくて、感じてただけです」


「同じだろ!」


 妖精はバカにしたような顔で首を横に振る。

 そろそろ本当にデコピンしてやろうかな。


「シンシア・アルグレット、23歳、ドエス、想い人なし、ハルトに対する感情10パーセント。これは知人レベルです」


「え!?」


 突然シンシアさんの個人情報を暴露する妖精。

 これが鑑定スキルか!


「スリーサイズもわかりますが聞きますか?」


「ちょ、待て! それはいらない。全部お前の鑑定スキルでわかったことなのか!?」


「そうですよ。ちなみに彼女は処女です」


 俺は異世界来てモンスターを初めて倒した時以来のガッツポーズをした。



(妖精サイド)

 私は目の前でガッツポーズをとる男を蔑んだ目で見る。

 処女厨。

 サキュバス界隈でもっとも嫌われている存在だ。

 ただこの言葉で興奮した男の性はけっこう美味しい。

 私は食後のデザートとしてこれを頂いた。

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