第2話 カードブリーダーと鑑定

「名前はハルト、17歳、童貞、年上のお姉さんが好きでメガネをかけていればなおよし。むっつりなのでチラチラと相手を見て、それを後でベッドの上で想像して……」


「待て! わかった! 認める! 認めるからそれ以上は言うな!」


 なんだこいつは!?

 これが妖精のスキルなのか。

 こいつが言ったことは全部当たっている。


「SかMかもわかります」


「おい、言わなくていい!」


「ハルトはドエム」


 俺はそれを聞いてクルリと振り返り全速力でその場から立ち去った。



「変な奴に関わるもんじゃねぇ……」


 追ってくる妖精を振り切った俺は道端に座り込む。

 俺が異世界で学んだことの一つに人とは関わらないということがある。

 貴族、ギルドの人、冒険者、街の人。

 もちろん挨拶とか軽い会話くらいなら普通にするがそれ以上はしない。

 ぼっち冒険者、俺はそれを貫き通している。

 それでも十分生活は出来るし、多少お金に困ることはあるけど……。


「落ち込みモードですね。元気出してください」


 頭をツンツンされ、地面を見ていた顔をあげると、先ほどの妖精がパタパタと宙を舞っている。


「なんで俺と関わろうとするんだよ」


「ドエムって言い当てたくらいで逃げないでください。ドエムなんて腐るほどいますし別に悪いことじゃありませんから」


「いやまあ、そういうことじゃねぇし。とにかく俺にはもう関わらないでくれ。妖精さん」


「スキル、カードブリーダー。それに転生者。転生者ってなんですか?」


 血の気が引いていく。

 ほんと何なんだこいつは。

 神の使いか!?


「さっきからどうしてわかる。なんで俺のことが……」


 俺が驚いているのが楽しいのか、妖精はニヤニヤしながらこちらを見てくる。

 なんかむかつくなこいつ、デコピンでもしてやろうか。


「私には鑑定のスキルがあるんだよ! すごいでしょ!」


 あぁなるほど、理解した。

 よく異世界ものである鑑定のスキル。

 俺が今いる異世界はレベルや体力魔力は数値化されていない。

 ただスキルは可視化されていて、冒険者ギルド、教会などでお金を払えば鑑定出来る。

 もちろん俺はその鑑定をやっていない。

 いまこいつが言い当てたみたいに転生者とバレるとどうなるかわからなかったからだ。


「ねぇごめんてば。仲よくしよ?」


 妖精が頭に乗り、先の尖った尻尾でツンツンしてくる。

 そんなに痛くねぇなこの尻尾。


「妖精はエッチな感情でお腹が満たされるんだろ? そんな奴、俺以外にたくさんいるだろ」


「たくさんいるけど……ちょっとこっちにも事情が……あ、それより転生者ってなに!? これだけ説明が出てこないの! ありえない!」


 転生者の説明は出てこない。

 良いことを聞いた。

 これでとりあえず俺が鑑定されても大騒ぎになることはないはず。

 でもカードーブリーダーのスキルは大丈夫だろうか。

 神から与えられたスキルだし、異世界人からすればとんでもないスキルの可能性はある。


「なぁ妖精さん。俺のカードブリーダースキルは異常か?」


「うん、異常なスキルだと思う。モンスターをカード化して使えるなんて聞いたことないし」


「鑑定はそこまでわかるのか。そうだよなぁ、やっぱ異常だよなあ……」


 今の俺の冒険者ランクは最低のEランク。

 実力と実績的にはDランクにはなれるのだが、昇格するにはスキル鑑定が義務付けられている。

 カードブリーダースキルで大騒ぎになるのは嫌だし、よく考えたら説明の出ない転生者もかなりやばいことになるんじゃ……


「スライム! レア度エフ!」


「レア度!?」


 突然妖精が叫び、俺はその言葉を聞いてすぐに持っていたスライムカードの一枚を見る。


 防/水属性 スライム 物理攻撃軽減:微 レア度F 


 項目が追加されているだと!?

 俺がいつも見ているカードに属性とレア度が追加された。


「うわっ! すげぇ! なにこれ!?」


 すぐに手持ちの全カードを確認。


 防/水属性 スライム大 物理攻撃軽減:微 レア度E

 攻/地属性 ゴブリン小 物理攻撃増加:微 レア度F

 攻/地属性 ゴブリン中 物理攻撃増加:微 レア度E


 同じモンスターでも大きさでレア度が違う!

 マジか!? 

 これはコレクター魂が燃え上がる!

 てかこれ、この妖精が近くにいるおかげか!?


 俺は立ち上がり、頭に乗っていた妖精を地面に座らせるとレア度などの文字は消えた。


「ふふ~ん。どうかな。私の有能さがわかったでしょ?」


 俺はその場で土下座した。


「妖精さん。どうか一緒にいてください!!」

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