第22話

 子供達と、長く過ごすことが増えたことが奏したのかは分からない。


 しかし奥様は、目に見えて元気を取り戻されていた。


 体に障るので、子供達が暴れまわる時は、私がその攻撃を受け止める。


 それをやや羨ましそうに眺めつつも、側で姿を見ていられることが幸せなのだ、とのお気持ちは十分に伝わってきた。


 その精神的な回復は、奥様に力を与えたのだろうか。




 館中が十分に寝静まった頃、奥様は、子供達の様子を見に立ち寄るようになった。



 私は、夜更けにも一度、子供達の様子を見る役目があり、そのことを知れたのは偶然だった。


 そして奥様がいらっしゃる時は、なるべく邪魔しないようにしていた。


 それでも、出会いがしらということは起こる。


 その時は何事もなかったように頭を下げ、奥様の姿を見送るだけだ。


 奥様は、いつもと同じ消えそうな声で、「ありがとう」とだけ残して、部屋へ戻る。



 ご自身の子息でありながら、会うことに礼を言わねばならないとは。



 この頃には奥様が、子供達へまで人々の心ない言葉が及ばないようにと、自ら遠ざけていることに気が付いていた。


 やりきれない感情が過ぎるのを振り払いながら、私は自身の仕事を終える。

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