第22話
子供達と、長く過ごすことが増えたことが奏したのかは分からない。
しかし奥様は、目に見えて元気を取り戻されていた。
体に障るので、子供達が暴れまわる時は、私がその攻撃を受け止める。
それをやや羨ましそうに眺めつつも、側で姿を見ていられることが幸せなのだ、とのお気持ちは十分に伝わってきた。
その精神的な回復は、奥様に力を与えたのだろうか。
館中が十分に寝静まった頃、奥様は、子供達の様子を見に立ち寄るようになった。
私は、夜更けにも一度、子供達の様子を見る役目があり、そのことを知れたのは偶然だった。
そして奥様がいらっしゃる時は、なるべく邪魔しないようにしていた。
それでも、出会いがしらということは起こる。
その時は何事もなかったように頭を下げ、奥様の姿を見送るだけだ。
奥様は、いつもと同じ消えそうな声で、「ありがとう」とだけ残して、部屋へ戻る。
ご自身の子息でありながら、会うことに礼を言わねばならないとは。
この頃には奥様が、子供達へまで人々の心ない言葉が及ばないようにと、自ら遠ざけていることに気が付いていた。
やりきれない感情が過ぎるのを振り払いながら、私は自身の仕事を終える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます