第19話
見知らぬ人間への興奮も治まってくると、ようやく人並みの甘えが出てくる。
眠るまで子供部屋で過ごしても、はしゃぎすぎる事もなくなるどころか、兄弟そろって本を読んでほしいとおねだりするようになった。
初日の邂逅が、あんまりな情況だったので、性根をひどく拗らせているのではと心配していた。
だが、父親譲りの尊大さはあれど、純粋な子供達だった。
あまりにも、純粋すぎるのかもしれない。
家の立場的に、周りの大人は強く出られなかったのだろう。
実際に他の使用人は、子供達がどんな悪戯をしようとも、二人が飽きるまで困ったように「お静まりくださいませ」と繰り返すばかり。
これでは人との関わりを学ぶどころではないはずだ。
尊大さは、将来のお役目を考えれば、悪い資質ではない。
それが悪い方向に出ないよう、今から教養を身に付けられれば、強みの一つとなるだろう。
子供達が寝付くまで、話を聞いたり、本を読んだりが定着しつつある頃だった。
旦那様が、部屋を訪れた。
お忙しいようで、子供達が寝入る前にお戻りなったのは、私が勤め始めてからは初めての事だ。
より一層、子供達は騒然となる。
ベッドを出て飛びつく二人を、旦那様は笑顔で抱き上げる。
疲労の滲んだ顔の中でも、子供達への愛情は見て取れた。
旦那様は、子供達を宥めてベッドへ戻す。
そして私に、「いつものように振舞ってくれ」と、譲るようでありながら指示を下した。
私は再び本を開き、読み聞かせる。
静かに話を聞いている子供達に満足したようで、旦那様は父親の顔で私に小さく肯いて見せた。
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