第11話

 そういった経緯が一因ではあるだろう。

 身寄りのない者の元へまで、主の子達の教育係という、またとない待遇の依頼が回ってきたのは。


 ガーデンパーティーの招待状は、そこで顔合わせを兼ねる為のようだった。

 それに、身寄りのない、ほとんどの者にとっては褒美ともいえる。

 残念ながら、着飾ることになど無頓着な私には、耐えるべき時間でしかないが。



 もちろん私の元ヘ話が回ってくるまでにも、面白半分か報酬目当てかはともかく、幾度かは希望者はいたという。


 だが、その者達の子育ての経験とは、自らの子であった。

 他人の子というだけでも気を遣うのに、あまつさえ主の跡継ぎであり、大層傍若無人な兄弟なのだそうだ。


 かくして長く続く者はなく、逃げ出してしまったという話だった。


 そういった真偽はともかく、何かしら多くの問題が発生したからこそ、最終手段である保護官への依頼を出すに至ったのだ。


 しかし、私のような立場の者なら、否が応にもその対処には慣れていた。

 慣れるとは、齟齬があるだろうか。

 苦労に思わないわけではないが、ただ心構えとして慣れてしまうとしか言えない。


 とにかく子供達は、脈絡なく、突飛なことを思いついては行動する。

 そういうものだと覚悟をしておくしかないのだ。



 できれば相手の信頼を得たいところだが、徐々に進まなくてはならないことである。多くを望むべきではない。

 期限まで、やり過ごせれば御の字というものだ。

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