第8話

 その家で、良からぬことが行われていた。

 それだけは事実だ。


 実際に保安官らが踏み込んだために、記録として残されたからこそ、市民の知るところとなったのだから。


 詳細がどのようなものであれ、問題は娘が、まだ少女であったことだった。


 成人していたならば、第三者の助けが入ったことで、自ら訴えるか否かを選ぶこともできただろう。

 だが被害者が未成年となれば、その身柄は自動的に、成人した者へ委ねられることになる。


 そして娘には、身寄りがなかった。




 若く、正義感に駆られた主が、事を公にすることになったとしてすら、解決に踏み切ったとしても驚きはしない。


 だが歳若い娘にとって、果たしてそれは救いだったろうか。


 小さな町の、全てが何処かで密接に関わりあっている弊害は、例え未成年の関わる事件であっても、完全に名を伏せることなど出来ないことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る