第7話
その恐ろしい事件を解決するに至ったのは、若き日の主が偶然、その家を訪ねる機会があったからだという。
彼女は、早くに亡くした母同様に、病弱で臥せってばかりという話だった。
皆、どこからともなく伝え聞くと、そうなんだろうと信じるものだ。
存在を忘れかけたような、父と娘の家は、町外れの薄暗い森の中にあった。
母親の死後、彼らは町に姿を現さなくなり、その内、町の誰もが気にしなくなった。
そんな折、若き主は役場で研修中であり、外回りの担当官について、件の町外れの家を訪れた。
私も保護官という、役場の下部組織に属している立場だから、一般の住民よりは仕事に触れる機会は多い。
若い役人の外回りといえば、簡単に口頭での事務的な確認程度のものだ。
提出された書類に不備でもあったか、税金などの未払いでもあったのかは分からないが、そのようなことだろう。
とはいえ、元より頂点の席が用意されている主だ。
これも慣習の一つ、民の暮らしを視察する名残りのようなものだった。
だから名ばかりの上司である役人は、自ら率先して仕事をしたに違いない。
役場でも、元貴族は良い部屋へと通されるように扱いは違う。謙って応対する役人の姿は、目に見えるようだ。
だからこそ、家主に応対することに気を取られていた役人が気付かなかったことへと、主は目を向ける余裕があったのだろうか。
娘は、ぼろを着せられ牛馬のように働かされていたとも、その家は娼館のようで、娘は淫らな衣をまとい、主達を誑かそうとしていたとも言われている。
なにぶん、憶測ばかりの噂話が元なので、真偽の程は分からない。
ただ、その時に、主達が罪となるような情況を目撃したのは確かなのだ。
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