館の住人
第3話
私は孤児院で育ち、院内で年下の者の面倒を見てきた。
貰われ損ねた私は、そこに居る他に生きる道はなかった。
だから仕方なくそうしていたに過ぎないのだが、唐突に顔を見せた古株の保護官から、「忍耐強く、この仕事に向いている」とお墨付きを頂いた。
私は訝しむような目を向けていただろう。
不愛想な保護官が、ただ労うために立ち寄るなど有り得ない。
案の定、そんなことをしたためた推薦状を渡され、養成施設費用を免除するからと、保護官の免許を取得することになった。
実質、命令だ。
安定した職を得る代わりに、未来は定められてしまったと同じだった。
まともな働き口を探すのも難しい孤児なら、感謝すべきなのだろう。
他に何をすべきか、何をしたいのかさえ考える事などなかった私は、ただ黙って受け入れた。
保護官は、巷では『子守』と呼ばれていた。
決して、子供だけを対象にした保護施設ではないのだが、そのように呼ばれるようになって久しい。
通常、私のような出自の者が、町のお披露目に参加することなどない。下々の部類になる人間の一人だ。
親の無い者が参加してはならないという決まりなどはなかったが、周囲の視線は冷ややかだ。
自然と公の場を避けて生きるようになっていく。
それが今、何故か私は、ダンスホールを眺めていた。
場違いな気分に落ち着かないながらも、己に課せられた務めのため、どうにか踏みとどまっている。
私は保護官の免許を取得すると、数年、保育施設へと斡旋されて働き、その後、子供時代を過ごした孤児院の保護官として戻り今に至る。
そこへ、この会への招待状を添えた、『依頼書』がもたらされたのだ。
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