第2話

 まるで疫病神のように扱われた女は、この場の、否、この町の誰よりも繊細な美しさを持っていた。


 しかし、どんな闇よりも暗い瞳を持つ故に、向かい合った者は空恐ろしい感覚に呑まれるのだ。

 哀しいことに。


 笑顔を見た者はなく、常に翳るかおは、陰鬱な空気に包まれているようであった。


 まるで、この町全ての憎しみ、妬み、哀しみを集めて模かたどられたようなひと




 だというのに――後で思い出してみれば、自分でも可笑しなことに、そんな人を私は、そう怖れてはいなかった。


 ただ取り巻く情況が、人々が、そのように振舞うので、そうしなければならないと、いや社会の輪から外れまいと、同じように反応していたに過ぎない。


 私は、あまりに視野が狭く世間知らずで、頭も固く、愚かだった。

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