お茶のおまけ

口羽龍

お茶のおまけ

 大学の帰り道、幹江(みきえ)はコンビニに向かっていた。その理由は、ペットボトルのお茶だ。今、ペットボトルのお茶におまけが付いている。それは『中世の戦士シリーズ』で、6種類あるという。幹江は全部集めたいと思っていた。昨日までに5種類を集め、あとは1種類だけとなった。


 幹江は緊張していた。あるんだろうか? なかったら不安だな。もうすぐそのキャンペーンが終わる。もし終わったら、もうおまけが集められないかもしれない。早めに揃えないと。


「いらっしゃいませ」


 幹江はコンビニに入った。棚には目もくれず、ペットボトル飲料の陳列されている場所に向かった。そこには多くのペットボトルがある。幹江は問題のペットボトルのお茶をじっと見ていた。残っているのはあるんだろうか?


 しばらく見ていると、それを見つけた。そのおまけは、白馬に乗った騎士だ。


「あった!」


 幹江は手に取った。ようやくすべて集まった。幹江はほっとした。


「やった、これですべて集まった」


 幹江はそれを持って、会計に向かった。全部集まった。帰ったら、全部並べてみようか。


 会計を済ませ、幹江は家までの道を歩いていた。幹江はとても軽やかな足取りだ。今日で全部集まったからだ。みんなに見せびらかしたいな。


 と、幹江は後ろに誰かがいるような気がして、振り返った。だが、そこには誰もいない。ここ最近、誰かに付け回されているような気がする。いったい誰だろう。全くわからない。おまけを集め始めてから、こんな事になる。まさか、おまけを狙っている人だろうか?


 幹江は家に戻ってきた。幹江派の家は2階建てで、2階に自分の部屋がある。


「ただいまー」


 幹江は家に帰ってきた。玄関は吹き抜けで、2階も見える。


「おかえりー。お母さーん、集まったよー」

「本当? よかったね」


 母は知っていた。幹江はペットボトルのおまけを集めていると。晩ごはんでよく話していた。今日で全部集まるとは。それは嬉しいだろうな。


「ありがとう」


 幹江は2階に向かった。2階の部屋には、すでに集めている5種類がある。早くそれらを並べたいな。

 幹江は2階の自分の部屋にやって来た。部屋には様々な物が飾られている。


「はぁ・・・」


 幹江は今日買ってきたペットボトルのお茶のおまけを出した。早くそれらを並べたいな。


「これだこれだ」


 幹江はすでに買っていた中世の騎士シリーズを全て並べた。これで全部並んだ。すごいな。イメージ図で見たとおりだ。


「すごいなー、中世の戦士シリーズって」


 幹江は荷物を降ろすと、勉強をする準備を始めた。もうすぐ試験だ。頑張らないと。


「さて、勉強するか」


 幹江は机に座り、勉強を始めた。だがその時、誰かが後ろにいる気がした。


「えっ!?」


 幹江は振り向いた。だが、そこには誰もいない。幹江は首をかしげた。父は仕事で夜まで帰ってこない。母は晩ごはんを作っていて、2階に来れない。また誰かに付け回されているんだろうか?


「誰かいたような気がするんだけど。お母さんじゃないよね・・・」


 幹江は勉強を始めた。だが、なかなかわからない所がある。ここがわからなければ、試験でいい成績を残せないかもしれない。


「うーん・・・。ここわからないなー。明日はテストなのに・・・。どうしよう・・・」

「幹江ー、ごはんよー」


 母の声がした。晩ごはんができたようだ。にらめっこしているだけではしょうがない。食べてすっきりしてから、また頑張ろう。


「はーい!」


 幹江は席を立ち、1階に向かった。だが、あるものを見て、幹江は立ち止まった。中世の戦士シリーズのおまけのポーズが違うのだ。


「あれっ!?」

「幹江ー、どうしたのー?」

「ごめん、今行くー!」


 母の声に反応して、幹江は1階のダイニングに向かった。だが、幹江は気づいていなかった。そのおまけが動いているのを。


 しばらくして、幹江は帰ってきた。今日はカレーだった。満足だ。これでまた頑張れるかもしれない。


「はぁ・・・」


 と、幹江は再び中世の戦士シリーズを見た。だが、またポーズが違う。明らかにおかしいな。


「あれっ、今さっきとポーズが違う」


 幹江は首をかしげた。このおまけ、何かがおかしいな。


「まぁいいか。勉強するか」


 幹江は再び勉強を始めた。晩ごはんを食べて気分を変えたためか、とても進みがいい。


 30分ぐらい経って、または母の声がした。


「幹江ー、お風呂よー」

「はーい!」


 幹江はお風呂に向かった。あれからけっこう頑張れた。お風呂に入ってまた頑張ろう。


 お風呂に行く前、幹江はまた中世の戦士シリーズを見た。同じポーズだ。大丈夫だな。幹江はほっとした。


 数十分後、幹江は戻ってきた。歯も磨いた。あとは勉強をして、寝るだけだ。


「はぁ、さっぱりした」


 幹江は再び机に座った。テストは近い。まだまだ頑張らないと。


「さて、もう少し頑張ろう」


 幹江はまた勉強を始めた。と、幹江はまた後ろを見た。誰かの気配を感じたのだ。だが、そこには誰もいない。幹はまた首をかしげた。




 もう11時になった。そろそろ眠くなってきた。明日も大学だ。しっかり寝ないと。


「さて、今日はもう寝よう」


 幹江は部屋の電気を消して、ベッドに横になった。明日はもっと頑張れたらいいな。


 幹江が目を覚ますと、そこは中世の世界だ。まさか、あのフィギュアの世界に入ったのかな?


「あれっ、ここは? どうしてこんな世界に?」


 と、後ろから白馬に乗った剣士が襲い掛かってきた。幹江は直前になって気づいたが、何もできなかった。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 幹江は目を覚ました。あの夢は何だったんだろう。あの剣士、おまけのフィギュアにそっくりだったな。偶然だろうか? それとも、何かの力だろうか?


「やっぱり夢か・・・」


 と、幹江は痛みを感じて、おでこを抑えた。


「いてて・・・」


 幹江は手を見て、驚いた。手に血が付いているのだ。幹江は慌てて鏡で自分の顔を見た。すると、おでこに血が付いている。そう言えば、夢の中でもおでこを斬り付けられたな。偶然だろうか?


「えっ!?」

「幹江ー、朝ごはんよー!」

「はーい!」


 何はともあれ、今日も大学だ。早く行かないと。幹江は1階に向かった。朝食を食べて、歯を磨いたら、早く行かないと。


 20分ぐらい経って、幹江が部屋に戻ってきた。早く支度をしないと。


「さてと、行ってくるか」


 と、幹江は誰かの気配を感じ、振り向いた。


「ん?」


 そこには、中世の戦士がいる。まさか、あのフィギュアが実態になった? そんなのがどうして?


「ギャーーーーーー!」


 ほどなくして、幹江は彼らに滅多切りにされて、命を落とした。


「幹江ー、早く学校に行かないと遅刻するわよー!」


 その事を全く知らない母は、なかなか大学に向かわない幹江を心配していた。ここ最近、遅刻が多くなっている。幹江が心配だ。


「もう、あの子ったら!」


 母は2階に向かった。早く行かないのなら、私が命令しなければ。


「幹江、早く学校に行きなさい!」


 母は幹江の部屋を開けた。そこには、幹江が倒れている。幹江に何があったんだろうか?


「あれっ、幹江! 幹江!」


 だが、幹江は冷たくなっている。そして、至る所から血が出ていて、じゅうたんやベッドの毛布には血が付いている。今さっき、朝ごはんを食べてたのに。どうしたんだろう。


「だ、誰がこんな事を!」


 と、母は振り向いた。誰かの気配を感じたのだ。幹江を殺した殺人犯だろうか?


「はっ!?」


 母は驚いた。そこには中世の戦士がいる。幹江が集めていたフィギュアにそっくりだ。


「イヤーーーーーーーーー!」


 ほどなくして、母も滅多切りにされた。そして、母も命を落とした。中世の戦士は、無表情でその様子を見ている。


 噂によると、そのフィギュアを全部集めた者は、次々と殺されるか、謎の失踪を繰り返しているという。

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お茶のおまけ 口羽龍 @ryo_kuchiba

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