ケイタが遺した六年分の夢日記。 それは毎朝吹き込む夢についてのボイスメモからの文字起こしで、夢日記を引き取ったタクミは解析を試みる......。 筆者の、音声認識や自然言語処理などへの確かな知識に裏打ちされて展開されるこの作品は、どこか浮遊感のある筆致ながら、私たちが住むこの世界のどこかで進んでいる物語なのではないかと感じさせる説得力を持っています。 起き抜けから霧散していく夢の記憶と、徐々に実感を伴っていくケイタについての記憶が交差するさまが、切なくも美しいと感じました。