第276話

「詭弁?詭弁じゃなく、俺は正真正銘の彼氏なんですけど」


「それなら僕も。」


「課長は違う」


「僕だって正真正銘の過保護な保護者なんだけどね?」




「詭弁ではない?それなら、俺がさっき見たものは何だったんですかね?」



先輩と六神が二人して真顔になる。堀田さんを見ながら。え?なに。



「海鮮バル……でしたっけ?魅惑の密会が行なわていたのは。」


「「…………」」


「確か、5人対応の対戦型アーケードゲームで、相手の敵がなかなかツワモノそうで。傍観している俺もひやひやしましたよ、ふふ。」



アーケードゲーム?5人対応の?そんな海鮮バルがあるの?いいな行きたい。



というか、自分の墓穴を掘られそうでいっぱいいっぱいだったけれど、


 

「……そう言えば、なんで先輩と六神がこんな繁華街の路地裏にいたの?今日は本部で研修会だったんだよね?」


「…………そうですね。」



六神がぽつりと言った。そしてなぜかさっきまでの態度から一変し、堀田さんに低姿勢で話しかける。



「言っときますけど、俺は被害者なんで。別にやましい気持ちがあったとかじゃなくてですね、」

 

「え?俺は“やましい”雰囲気だとは一言も言ってませんが、やましい気持ちで臨んだゲームだったんですか?六神さん。」



六神がわざとらしく咳払いをする。私をチラリと見たと思ったら、すぐに先輩の方へと身を乗り出した。



「課長、俺を犠牲にするつもりなら課長も道連れですからね。」


「ああ分かってるよ六神君。でも僕は別にバレても大した被害はないと思うけどね?」



今私の目の前では、意味深な会話、いや意味深な会議が行われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る