第270話
ふと前を見れば、六神はなぜかひたすらパクチーを一つのお皿に集めている。まさかいじけ始めたのだろうか?めんどくさい。
「あの、堀田さん。違うんです、私、朋政先輩じゃなく今私の目の前に座る㈱央海倉庫横浜支部国際営業部三課の六神千都世と付き合ってるんです!」
どーよ。この完璧な彼女の模範解答。
六神にドヤ顔を向ければ、六神は無心に大量のパクチーをライスペーパーで巻いている。届いていますか彼女の声!
「あ、ああそうだったんですね。すみません六神さん。実来さんを勝手にこちらのアッパーな方とセットにしてしまいまして。」
「いえ全然これっぽっちも気にしちゃいませーん。その堀田さんの心遣いに、俺からのささやかなプレゼントです。」
六神が先程まで作っていたパクチーオンリー生春巻きをのせたお皿を、隣の堀田さんに進呈した。すると先輩が「ナイスちーくん!」と小声で六神に言う。
「わあ。俺、よくパクチーっぽいって言われるんで嬉しいです。」
「堀田さん、パクチーと一緒でクセが強そうですからね。うちの春風を口説いたその根性を賞して、召し上がれ。」
「ありがとう六神さん。パクチーは依存性も高い合法植物ですしね。実来さんはパクチーはお好きですか?」
「え?なくてもいいけど、あればあったで食べる派ですかね」
「俺は好きかどうかを聞いたんです。はぐらかさないで下さい、実来さん。」
「あ堀田さん、俺はこの先見るのも嫌なくらいに嫌いですね。」
そんな実来春風は、先輩にスマホで写真を何枚か撮られていた。自由っていいな。基本的人権が熱い時代でも迷惑行為防止条例には違反しているから自由って怖いんだよ先輩。
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