第266話

「実来さんはお酒は飲まれます?」


「飲まれません。堀田さんは?」


「飲まれます。大いに。」


「………」


「なんです?黙り込む実来さん、新鮮です。」


「……すみません。ほんとは私も、お酒は飲む方でして。」


「あれ、なぜ嘘をついたんです?その嘘はリスクを生み出します。」



“飲める”と言えば、お酒を飲まされると思った私。私からすれば“飲めない”方がリスクがなさそうだった。



「…えっと、堀田さんを信頼してないわけではないんですけど、飲めるって言えばお酒を飲まされる気がして、」


「飲めないって言われた方が、逆に飲ませたくなるのが男という生き物なんです。」


「………」


「実来さん、彼氏に悪いとか思う以前に、まずは自分を大事にしてください。」



はい?



「…なんで、私に彼氏がいること知ってるんですか?」


「この間弊社に来た時の様子を見ていたら、嫌でもわかるでしょう。」


「………」



いや、あの時はまだ六神とは付き合ってなかったはずだけど…?



にしてもだよ?じゃあなに。なんだと言うの堀田月麦さん。あなたは分かってて誘ってるとでも言うの?

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