第264話
さすがに、二人きりでご飯ってどうなのだろう?大事な取引先ではあるけれど、堀田さんの言う通りまずいはまずいんだよなやっぱ。
そら何がまずいかって六神の取り扱いに要注意なわけで。
私が『彼氏がいて彼に悪いので。』と凡例を言おとしたところで、堀田さんが眼鏡を外し、ハンカチでレンズの汚れを拭き始める。
ゆったりとした口調で、堀田さんの唇が動いた。
「彼氏さんがいるとかいないとか、彼氏さんの束縛が凄いとか凄くないとか、そんな理由で大事な取引先の誘いを断るような社会人では困るんですよ、実来さん。」
「…………え、」
「そんな私情を持ち出すような生ぬるい女性ではないと、俺は思ってるんですけどね。」
「…………はい?」
「いえ、いいんですよ。嫌なら断って頂ければ。」
え。
なにこれ。
誰だ。堀田月麦が眼鏡をとったら人格変わる設定にしたやつ。その設定、懐かしすぎだろう。
眼鏡のない堀田さんの右目の下にはほくろがあって、インドアそうな肌を夕日が照らし、ミステリアスな雰囲気をつくる。
ふわりとした焦茶の毛先は柔らかそうなのに、つり上がる目元は鋭そうだから、私もつられて顔が引きつる。
「ただ、ですね。実来さん」
「は、はひっ?!」
「よく聞いてください。」
そう言い始める堀田さんが再び華奢な眼鏡をかけた。さっきまでの優しい人格が戻りそうな予感で、私の脈拍数も正常値に戻る準備を整える。
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