第261話

再び青司に肩を組まれ席に戻された六神。逃げようにも逃げられない。その肩書は悪魔で鬼で課長なのだから。



もし春風にばれたらなんと言おうか。



そうだ、朋政課長に左遷させると脅されたと言えばいいか。いやむしろ春風のことだ。合コンってなに、合金素材のコンクリート?とか言いそうだ。



そう思った時だった。



「同罪だね六神君。いや彼女のいない僕はなんの罪にも問われないかあ。」



青司が目を細めつつ口角を上げ、六神を不敵に見た。苛ついた六神は腕を組んだついでに、ふてぶてしく脚も組む。

 


「春風は懐が深いんでカルシウムとの合コンごときに取り乱すようなやつじゃないんで、」


「なら後から僕がセンターカルシウムと六神君のツーショットを撮って春風に送りつけてあげる。」


「“春風”呼びされるの格別に苛つくんで今すぐ慰謝料払ってください課長」



と意味深に見つめ合いながらも会話をしていた六神と青司。CAが色めき立つ中、ふと青司の視界に何かが入る。



窓際の席に座っていた六神。その右隣に青司が座っているわけだが。



青司が威嚇する六神から目を外し、窓の外をじっと見つめ始めた。六神もその違和感に、青司の視線の先をたどり見つめる。



二人が窓の向こうに見たのは。なんともにこやかな笑みを携える春風と、どこかで見覚えのある眼鏡の爽やかそうな男が楽しそうに道を歩いていく姿だった。



「…………」

「…………」


 

二人は頭が真っ白になると同時に時間が停止した。

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