第254話

「いつものあの満面な笑みに隠された腹黒そうな顔?」


「いや、満面の笑みから不意に見せた鋭い目つき。あの人もなかなかにやばいね。」


  

まゆゆが「池駒にもそういう独占欲みたいなのが備わってほしい」という視線の先には、鳥ハムだけを大量に食べている池駒の姿があった。



ふと六神と目が合って。食べ終わった六神が机に肘をつき、私をじっと見つめてから口角を上げた。



先輩、私と六神が別れたらたったの10万って。どう考えても安すぎますよ。六神の愛の重さから考えれば、せめて先輩の退職金くらいはないと。



そんなノロケを朝から思う私。六神に微笑み返し、温かいコーヒーを堪能するようにすすった。





「お昼どうする?帰り道で食ってく?」


「あ、私スンドゥブかチゲ鍋食べたい!」


「この暑いのにないわー。てかはよ帰りたい。」


「お前はそればっかだなあ!昨日は散々お楽しみだったようで?疲れたんかなこの子は〜。」


「すぐ寝た旭陽が言うことじゃない。」

 

「っはい、さーせんっしたー!!」



池駒の車で帰りの道中、六神がスマホを取り出し画像をスライドしていく。ほとんどが私が一人で写っているものばかりで、二人の画像が三枚程度しかない。



「……え?てか、いつの間にそんなに写真撮ってたの?この画像なんて私後ろ向きじゃん。」


「この後ろのラインがいいんじゃん。腰から尻にかけてのラインがだな、クビレが見当たらない寸胴で、」

 

「スマホ初期化してあげよっか?」

  

「もうメモリカードに落としてあるからまあいいけど。」


「よくないでしょ!胸に手を充てて考えてみなよ。」

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