第251話

「……その、今まで付き合った彼女にも、そんな感じだったの?」


「そんなってどんな?」


「…狂い気味のゆがんだプロのストーカーで鬼重おにおもだったの?」


「俺の肩書きラスボス級じゃん。常人なら死んでるね」


「……そっか。私って常人じゃなかったのか。」



六神が私を抱きしめる腕に力を込めて、脚を絡ませてくる。眠そうな声で吐息まじりに言うもんだから、耳が熱くてしょうがない。


 

「うん。まあでも、俺も今までの彼女には常人並だったよね」

 

「……え?」

 

「俺が今まで好きになったのって。春風だけだし」


「…………」 


「今までは向こうに告られて、どうしてもって言われたからなんとなく付き合ってきたけど。大して好きにはなれなかったよね」

 

「……って、じゃあ。私にだけそんなラスボス級の愛なの?」


「は?……あたりまえ、じゃん」


「ちょっと、ねえ、」


「んー…?」



私が六神の腕をほどいて振り返る。でも六神は寝息を立ててノンレム睡眠に入っていった。



え?私にだけなの?今までの彼女はこんなゆがんだ六神を知らないの?



これをどう受け止めればいいのだろう。嬉しいの?安心なの?でも冷や汗が止まらないの?もうすぐ夏だし、納涼には持ってこいのネタだよね。



六神のやわらかい髪を撫でて、おでこに一つキスをする。六神の布団を整えて、隣の布団にいこうとすれば、



「いっちゃやだ」



と微かな声が聞こえて。そのラスボス級の子供に「いかないよ。」とまた頭を撫でてから同じ布団に入った。

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