第248話
六神が私の足をおろして、私の浴衣の裾を直してくれる。やっぱりその手はまだ震えていて、私の感情はどう動いていいのか分からない。
六神の大きくて骨筋が約3割隆起した手。いつだってその手は私に甘くて。ただただ甘すぎるばかりで。
今だって、自暴自棄になる私を慰めるために、私に見放されるかもしれない覚悟で秘密を暴露してくれたんだから。いつもは態度のでかい六神が自分を卑下してまで私を立たせてくれて…。
「…ちとせ……」
私をそこまで想ってくれていた事実に、何も返せるものがなくて。
ただその震える手を、両手で取ることしかできない。
「大丈夫、大丈夫だから。ね?」
うつむいたままの六神が、きゅっと眉を寄せて何かをこらえる。怖いのは、ずっと私もそうだったんだよ。
「わたしは、千都世にそこまでの愛をもらえて、めちゃくちゃ幸せものだよ。」
「…………」
「大好きだよ千都世。」
「……」
「愛してる。私もいつか、人生棒に振るくらいの愛を返すから、待っててよ。」
「……まじ?」
「まじ。」
「……処理しきれなくなって、捨てない?」
「捨てるわけないじゃん!」
「重すぎるのが辛くなって、俺を捨てない?」
「捨てない!だから、私のことも捨てないで?」
「…ばーか、捨てれるわけ、ないじゃん」
六神が大きく息を吸い込んで、一気に放出する。安心しきったように、いつもの気怠い顔の六神に戻って。てっきり抱きしめてくれると思っていたのに。
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