第245話

自暴自棄になるしかなかった。あんな、ただやり捨てられたみたいな私。ちっぽけで浅はかで、あまりにも愚かだ。



六神が私の腕をつかみ、意識を保たせようとする。こんな時でも六神は六神のままで、取り乱した私にも平気で異様なことを言うのだ。



「春風、脚だして」 


「…は、あ?」

 

「いいから。今から俺の言う事、最後まで聞いて」



折り畳まれた脚をつかまれて、六神の利き手によって私の利き足が伸ばされていく。草履を履いていた私の素足を六神が軽々と持ち上げて。



そして、私の足の指を舐め始めた。



もうほんと信じらんない。  



「っな、にしてんの……」


「ゾッとする?」


「ば、バカじゃないの……」

 

「そう、俺って馬鹿なんだわ」



浴衣がめくれて、下着が見えそうになり慌てて裾を抑える。でも六神は私の足の指に夢中なようで、小指の腹を舐めていく。



ゾッとすることをされているのに、生温かい舌の感触が指の間をなぞり、感じたことのない感覚に襲われる。


 

「……春風が佐渡とできてたのも、春風が佐渡に捨てられたのも、知ってる。」


「……っ」


「あの画像の泣き顔の理由、春風は特に言わなかったけど」


「…言えるわけ、ないよ……」

 

「うん。俺も聞けなかった。」


「………」


「佐渡に捨てられたこと知ってた上で写真撮ったって言ったら、さらに軽蔑されると思って。知ってた、なんて言えなかった。」



たまたま泣いていた場面に出くわして、魔が差したように写真を撮ったのだろうと思っていたけれど。


  

六神はきっと、あの夏休みの日、私と先生のやりとりから見ていたのだろう。お金を無理に渡されて、あてもなく彷徨って、気付いたらベンチで座って泣いていた私を。

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