第237話
「でもほら、俺よりもずっと長い片思いしてんのは六神の方じゃん。なんで大学も一緒だったのに告ってないんかねこの男は。」
「ほんと逆にこわいわー。その間にもちゃっかり彼女作ってるのがこわいよねもう。」
はは、水絵さんのことはね。説明しようにも説明できない私たちは、適当にビールで流し込んで誤魔化した。
「てか六神ってさー、ぱるるを好きになる前に何人の女と付き合ってきたの?」
「中学の頃に1人、高校の頃に2人、大学ん時に1人。」
初めて聞いたなこれ。私が赤魚の塩焼きの身を丁寧に取りながら「へー。」と適当に言った。
「妬いた?」
「全く。」
「あ、そう。」
興味がなかったと言えば噓になる。でも過去の彼女の話を聞きたがる女って。なんとなく嫌がられそうというか、かっこ悪いっていうか余裕がないっていうか。
そんなことばかりを考えていたせいか聞くことが出来なかった。でも六神が慣れてるのは分かってるし、実際に今聞いて、ああやっぱりなあって。平然を装うための負け惜しみなんてのが出ちゃうよね。
どうしたって六神とは対等でいられない。
まゆゆが意味ありげに、ちらと六神を見てから、目の前に座る私を見る。
「ぱるるは確か、2人って言ってたよね?」
あ、まずい。
私がそっと隣にいる六神に目をやる。その表情は「はあ?」と言っていた。
「高校の時1人と付き合ってて、大学の時1人って言ってなかったっけ。」
「あー…え?そ、そうだった?」
「うん、絶対そう。そう言ってた。」
六神には高校時代に彼がいたことは言ってあった。
でも、大学の佐渡先生とのことは知られたくないし、そもそも向こうには付き合っているという感覚がなかったらしいからカウントしていなかった。
違うんだ。まゆゆには処女を失った時の話を聞かれて、大学で1人だけそういう関係になった人がいるって言っただけなんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます