第236話

「池駒はけっこう面食いなとこあるじゃん。」


「え?え?それってあたいが可愛いってこと六神ー?」


「クエよりはわりかしイケてると思う。」



六神がクエのおかしらを箸で持ち上げてまゆゆに見せた。



「てか池駒と六神がお互いに好きな人知ってたんなら、もっと早くうちらに伝えてくれればよかったじゃん。」


「よかったんじゃんって。軽く言うけどね、俺らの身にもなってよ?どれだけ苦労したと思ってんの?」


「苦労もへったくれもないでしょ。"赤信号、一人で躊躇するなら二人で進撃せよ。"っていうじゃん。」  



めちゃめちゃなことを言うまゆゆが、ホタテをお皿にのっけて、貝ガラから器用に身を取り、キムチを大量にのせたまま口に運ぶ。



「熱っ」と言うまゆゆに、池駒がすかさず冷たい水を差しだした。なんでもいいけどまゆゆ、今キムチ食べるの?え?彼氏と来てても気にしないの?



私もハニートラップを決行しようとした日の夜、つぶ貝キムチを食べていたと六神が言ってたな。まゆゆに心の中でつっこむのをやめる。



「まゆうは、ライブで知り合った男のこと好きになったとか言ってさ。とても俺の入る余地なんてなかったよね。」



ああ、元カレの一希さんのことね。そらそうか。いつだったか負け戦はしない主義だと言っていた池駒の言葉を思い出す。

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