第235話
「露天風呂客室の露天てね、けっこう音声響くからお気を付けくださいね六神さんとこ。」
夕飯の時間になって、4人で個室のダイニングに案内された。プールや海といったらBBQがしっくりくるけれど、仕事の疲れを癒したい私たちは自分たちで焼いたりよそったりをしたくない。
またはバイキングで取りに行くのもめんどくさいから、少し奮発して個室で懐石料理を予約していた。
「おー。この刺身透明感ありすぎて惚れる。」
「そのお刺身はクエだよ六神。」
「クエってジンオウガレベル?」
「ウミウシボウズレベルかな。」
「おーいお二人さん話聞いてますー?」
池駒が私たちに無表情で問いかける中、まゆゆが七輪で焼くホタテにキムチを乗せる。泡を吹き出し煙を上げて、なにそれめっちゃ美味しそうじゃん。
池駒はすでにビール瓶を二本も開けていて、まゆゆが「飲みすぎんなよー」とたしなめた。
隣は広間になっているらしく、今日は宴会が行われているらしい。何人もの話し声が微かに聞こえてくる。
「なんかどこかの大学が昼間に学会だか講演会だかやってたらしいよ。」
「なんだっけ。10周年なんとかシンポジウム?」
「法学系のね。隣、その宴会じゃない?」
「へー10周年ってかなり浅くね?」
そんなどうでもいい話をしていると、池駒が六神を見て言った。
「そういやお前って、実来ちゃんのこと大学の頃から好きだったんだよな?」
「…そういや池駒は俺が入社当時から福間のこといいなって言ってたっけ。」
「ええーそうなの?!」
今の驚きはまゆゆだ。確かに池駒がまゆゆのこと好きだったなんて情報は私も知らなかった。飲み会の時は意気投合していることもあったけれど、少なくともそういう素振りはなかったように思う。
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