第232話
「一世を風靡したクッキー缶も今やメーカーが在庫抱えて大変なんだわ。」
「だからって観光地で売らなくてもねえ?」
「むしろ観光地のが外国人観光客も多いし、旅行は財布の紐も緩むから目のつけ所は悪くないんじゃない」
「だからってそれを素人に売らせるってさー」
「素人じゃないし。営業のプロだし。」
「あらそれは失礼。」
「まあ手伝うっていいだしたのは池駒だし?あいつ大してなんもしてねーけど」
今やZ世代と謳われる人類が存在する時代、タイムパフォーマンスを重視するなら積極的な声掛けほど有効な営業はないのだと六神はいう。どんなに目立つポップを作って置いても、足を止めて読まれなきゃ意味がないと。
実際にそれをやってのけて、さっきの小一時間で30個を売り上げたのだから返す言葉もない。
営業の真髄を見せられた気がして、かっこいいと思う反面なんだか悔しい気もする。
「しよっか。」
ほら、仕事のできるかっこいい六神がこんなことを言うのだから。どうしたって受け入れざるを得ないのだ。
「ん、や、やだそこ、」
「ここ触られながら突かれるの好きだもんね」
「ん、ちが」
「きゅってするとしまるし」
「や。きゅって、しないで」
「あーかわよくて持ってかれそ」
夕飯前だというのに何をしているのか。こうしてすんなり流されていく私は、やっぱり六神よりも何歩も後ろを歩いている気がしてならない。
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