第230話
「でも個包装じゃないからご近所に配れないのよね〜」
「お盆に親戚で集まる時なんかにお茶菓子として出すのもいいと思いますよ?」
「ああうち孫が5人もいるから、確かに喜ぶかもしれないわねえ。」
「卵不使用で、着色料も野菜色素を使用しているからお子さんにも安心です。」
「そうなの?」
「はい。しかも砂糖の代わりに
「まあ。じゃあ、二つ買っていこうかしら。」
六神の営業スマイル、やばいな……。
営業マンのしたたかそうな喋り方とか、目が笑っていない、見透かすような笑顔って私苦手なんだけど。六神は相手に取り入ろうとするわけではなく、ただ数あるネガティブな質問を事前に把握しているかのようにレスポンスが早い。
あの素直な笑顔。あれは営業用なんかじゃない。私が大好きな六神の笑顔だ。おばちゃんが近付きたくなるのも頷ける。
見ず知らずの売店で勝手にお高いクッキー缶売るために、お安く振りまくんじゃないよその笑顔。
そんな醜くてかわちい嫉妬をしていると、また違う二人組の女性が六神に話しかけていた。池駒は浴衣から覗く筋肉を勝手に触られている。まゆゆはどこよ。
「お兄さん!クッキー缶買うから後からマッサージに来てくれたりしない?」
「……は?マッサージ?」
「うん!お兄さんたちいくつ?うちら23歳なの。」
「随分とふけ……大人っぽくみえますね」
「うちら女二人で来てるからさあ。良かったらお兄さんたち二人で、うちんらの部屋に遊びに来ないかなぁって。」
まゆゆがおばちゃんらの群れに押されて、池駒の元まで辿り着けていない。
本当に、本当におばちゃんみたいな20代がいるなんて――――。
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