第228話
今は離れて暮らしているからいいけど、もし一緒に住んでいてこれだとかなり息苦しい。
っていずれ一緒に住むことを考えてしまっているのは、どう考えたって六神の二世帯住宅発言のせいだ。
つまり、私のママのために二世帯住宅を建てるって。そういうことじゃんね?息苦しいとかいいつつも、結婚云々のことを考えるとしっかり自分の頬がほてってしまう。
まゆゆのように比較をしてみれば、朋政先輩に結婚をほのめかされた時は受動的に拒否するような言葉が出てしまっていた。母を一人には出来ないと。その通りだけど、実際いつまでもそれを理由に結婚しないわけにもいかない。
六神に対してはただ好きで好きで、結婚まで思い描くほどの余裕もなかったけれど。もし六神も先輩のように仕事に貪欲で海外赴任を狙っているとしたら、私はそれでも能動的についていきたいと返事をするだろう。
結婚は合理性を考えるだのなんだのいったところで、やっぱり好きという感情には叶いっこないのだと六神と付き合って思い知らされる。
いいじゃない。感情に身を任せるばかりの実来春風だって。
二階にある大浴場から、客室エレベーターまでいく途中、大ホールと書かれた立て看板に目がとまった。
『丸徳大学法学部10周年記念シンポジウム 法的規制厳格化における社会的同調圧力依存』
丸徳大学?商社みたいな名前の大学だなと思い、まゆゆと「こんなリゾートホテルでも講演会みたいなのやるんだね」と言いながら、スリッパを鳴らし歩いていく。
ビン専用自販機でコーヒー牛乳を買って、一階にあるお土産コーナーを見に行こうと階段を降りている時だった。
階段を降りる途中、お土産コーナーの一角に人だかりができている。
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