第222話

前の塩対応な六神も経験している私は、今の六神でないと駄目な女に堕ちてしまいそうで。もし私が堕ちてしまったとして、もし六神に何かのきっかけで突き放されたらと思うと怖くて堪らない。



あれだけ六神と元サヤに戻るまでのエピソードを乗り越えておきながら、今度は深みにはまるのが怖いと思っている私は、やっぱり大学の時の一件が影響しているのだろう。



信頼していた佐渡先生に捨てられたことが、今でもトラウマとなってすみっこに暮らしているのかもしれない。



そんな自分の女々しさを呪いたい。弱い自分を葬りたい。



六神に縋れば縋るほど私は駄目になる。だからたかがナンパ一つで、助けに来てほしいだなんて思う私が間違っていたのだ。




「春風、日焼け止め塗り直そっか。」

「うん。」

「うつ伏せんなって」



うなじから、オフショルダーの水着をずらして、六神が丁寧に背中全体を塗ってくれる。



「あーもう日焼け跡できてる」


「うっそ。早くない?」


「紫外線を舐めちゃいかんよお嬢さん」


「紫外線っていうか太陽って女子に嫌われものだものね」


「でも太陽も星の一部だって思えば好きになれそうじゃね?」


「六神が暑さにやられてロマンチシズムに流されてく」 


 


暑さの中でも、温かい六神の温度は好きでしょうがない。大好きとまではいってやらないけど。今そこまで大袈裟に思おうもんなら、確実に六神に流されてしまうのだ。



だって、さっきまで塗る作業をしていた六神の手は、もはや私の内太ももまで下りてきているのだから。



「ねえ脚は自分でできるって」

「大雑把な春風は裏側まで塗らない」

「決めつけないでよこのエロティシズム」

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