第218話

ロッカーにタオルを取りに行っていたまゆゆが、私と六神の間からひょっこり顔を出す。



「ちょっとなにあれ。なんなの?旭陽あさひのやつなんでパーカー脱いでんの?筋肉アピール?!」



池駒旭陽いけごまあさひは、筋肉アピールにより上半身が防御力ゼロになっていた。確かにさっきまでは日焼け対策によりパーカーを羽織っていたのに。



でも池駒のお腹はシックスパックになっていて、プロテインで造られたというよりも、ちゃんと食べ物のたんぱく質から造られた筋肉のようだ。あれならアピールしたくなる気持ちも分からなくはない。


 

「あんなんマッチョ好き女子ホイホイしてるようなもんじゃんね?てかなにあの女!ネットの三角ビキニとかボンレスハムで夏のお歳暮真っ盛りじゃん?!」


「大丈夫だよ。お歳暮商戦始まる季節だけど、池駒はまゆゆ一筋だから。それにまゆゆのがずっとスタイルいいし美人じゃん。」



「ね?」と六神に同意を求めれば、「俺は福間の斜め上いく思考と、危機感ある時でも饒舌な面は褒めてやりたい」と賛辞を並べた。




「お姉さあ〜ん!だめだめ!その男、人のもんだから!」



いてもたってもいられず、私が果敢に池駒を囲むメス二人のもとに攻め入った。



「実来ちゃん!」

「お姉さんごめんなさい!彼の筋肉はすでに一人の女のものだから!」



池駒が“助かった~”みたいな安心の表情になり、私が両手を合わせてお姉さんたちに謝れば、なぜか池駒が私の肩を抱き寄せて言った。



「つーことで、ごめんね!」



渋々踵を返し、その場を後にしたお姉さんたち。



信じられないと思い、そのまま池駒の手を振り払う私。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る